神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

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◆インターフェイス8

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------------------------ インターフェイス7 の つづき 8 ---------------------

まずい・・・

君江の瞳が写した炎と同じ、青色の炎を映し出していた弁護士の友人近藤(コンちゃん)の瞳を見た私は、君江の2つ目の窓を閉め忘れたことに気がついた。
今から戻ったところで面会時間は過ぎている。
忘れ物をしたとでも理由をつければ入れてもらえるだろう。
だが、先ほどまで面会していた同じ部屋で君江と会うことはできない。


窓を閉め忘れたことで、君江はずっと私の傍にいたのだ。
私はとっさに鎧を着けた。
が、目の前にいるコンちゃんには鎧を着けてあげることはできない。
直ぐにでも窓を閉めに行かなければ・・・

まさか・・


「?なに?何か言った?」

「いえ、なにも・・」

「な~んかさっきから誰かが何か言ってる声が聞こえるんだけど、由紀、ホントに何も言ってない?」

「うん。大丈夫?コンちゃん。きっと疲れているのよ。今日は早めに休んだ方がいいわ。」

「ああ、そうかもしれないな。このところ君江の件で色んな人と会ったりしてたからかな・・・」

「ごめんね、厄介なこと頼んでしまって。
それにしてもこれだけのこと、よく調べ上げたね。すごいわ。」

「まあね。伊達にキャバクラ通いしてないよ。
女の子達にバイトで頼めば動いてくれるからね。
たまたまその中に一人、高野まゆみの中学生時代を知る同級生が運いただけなんだけどね。
それと高木と同僚の石川は司法研修生時代の同期なんだ。
あいつも由紀と一緒だよ。
弁護士会に納める年会費がもったいないと弁護士にはならずに一般企業に就職したんだ。
(*弁護士会に会費を納め登録をしなければ企業においても弁護士としての活動は一切できず、単に法律に詳しい人というだけになります。)

あー痛ッ痛タタタ・・女の人ってよくこんなもの履いて歩けるよね。
こうして立っているだけでも足が痛くなってきた。
これで突き飛ばして逃げるって・・やっぱり無理がないか?犯人は男なのかなぁ?
巨漢の高木を突き飛ばせるほどの腕っ節の強い大女ってのはどう?」

「ん~・・・それは・・・もう一度考えてみる。
そろそろ帰らないと。猫が待ってるから。」

「おお、じゃあまた連絡して、こっちからもするから。」

「うん、じゃあ・・」

「あっそうだ。先週の月曜日、代官山歩いてたよね?
声、かけそびれちゃって。」

「ええ?歩いてないわ。代官山にはもう2年くらい行ってないわ。」

「あれぇ~そっかぁ。じゃ見間違えだ。よかった声かけなくて。」

「そんなに似てた?」

「うん、髪型も髪の長さも雰囲気もソックリだった。」

「やだぁ、そんなに似てる人がいるんだ。」

「由紀を知ってる僕が見間違えるんだか・・・
あれ・・もしかして君江と似てる人が犯人?・・ありえなくはないよなあ。
とにかく君江が事件当日、家にいたことが証明できて、高野まゆみの証言の裏を取れば、冤罪が証明できるな。由紀は引き続き君江の方を頼むよ。」

(そうね、それがいいわ。
しっかりね。でも貴方ごとき人間にこの謎が解けるかしら・・ふふふ)

《君江さん、いい加減にして!黙りなさい!》


「なに?やっぱり由紀なんか言ってない?」

「いえ、何も・・」

「ああ、やっぱり今日はもうこれで帰って休むことにするよ。じゃあな。」

「うん、また連絡するわ。」

ごめん、コンちゃん・・・・
私は、弁護事務所を後に、重い足取りのまま帰宅をした。

そう言えば、尚美先生は君江について身体醜刑障害を克服すれば全ての障害は治るであろうと言っていた。
そしてそうなった原因もあるはずだと言った。
けれど、君江はそう簡単にはいかない相手だ。
一層のこと、明日、閉め忘れた窓を閉じたらこの件から手を引いてしまおうか・・・

「ナぁー・・クゥーん・・」いつにも増してジュディが甘えてくる。

「ジュディ、貴方は人間の言葉がわかるの?
わかるなら教えてちょうだい。貴方の元飼い主さんは大変な人だったのね。」


翌朝、午前中に面会の申し入れをしていた私は約束の時間よりも早めに到着した。

「今日は面会の予約に空きがありますから、時間制限はありませんので。」
そう言いながら職員は案内してくれた面会室のドアを開けた。

「あっ・・・すみません、昨日と同じ部屋がいいんですが。」

「はい、そのように伺っておりましたが、あの部屋は使用中ですので、ここでお願いします。」

これは困った。
あの部屋でなければ君江の窓を閉じることができない。

「では、申し訳ないのですが、あの部屋が空きましたら移動したいのですが。」

「原則、面会室の希望は受けておりません。」
少しムッとしたように職員は言った。

「お願いします。
あの部屋でないと君江受刑者の落ち着きがなくなり、カウンセリングはおろか雇用についての面談もできない状態になるんです。
お願いします。」

「でも、今日は無理です。こちらで・・」

『私なら大丈夫です。由紀さん、おはようございます。』
後方から看守に連れてこられた君江が私に声をかけた。
君江は笑みを見せながら私の前を過ぎ、面会室の椅子に腰を下ろした。

「では何かありましたら、これで呼んでください。」
職員は部屋の隅にある電話を指差して言い、出て行った。


(来ると思ってた。)

《そう・・やっぱりお見通しなのね。》

(昨日はありがとう、窓、開けておいてくれて。気分転換ができたわ。)

《今日はそれを閉めに来たのよ。その前に聞きたいことがあるの。
まさかとは思うけれど、》

(これを見て。)
君江は面会室のテーブルに指でなぞり絵を描いた。

《これは?》

(見ての通りよ。インターフェイスってわかる?)

《知ってるわ。境界面や仲介するもの中間、その他、コンピューター用語としても周辺機器を繋ぐ接続面をそう呼んで使われることもあるわ。》

(ご名答。
たとえばパレットに白の絵の具と黒の絵の具を半分ずつ出しても仕切りでその色同士が混ぜ合わさることはない。
でも仕切りを外せば、白と黒は混ざって灰色になる。
コンピュータの接続部分に指定した機器を規則的に繋げていれば、当然、稼動する。
そしてそれを違うところに差し込めば動かない時もあれば誤作動を起こす場合だってある。
それがインターフェイスよ。
私はみんなのインターフェイスを実現してあげただけよ。
ありがたがられても犯人にされる覚えはないわ。)

《・・・もしかしたらと思ったけど、やっぱりね・・・・
君江さん、貴方は自分のしたことがわかっているの?
これもインターフェイスなの?じゃ金のパンプスは何?》

(そうよ。
由紀さん、恋人いる?洋服何枚持ってる?他の人が沢山洋服持っていたらなんて言う?)

《恋人?当分いらないわ。仕事と勉強の邪魔なだけよ。
洋服は数えたことないけど、沢山持ってるわ。
他の人が洋服を沢山持っているかどうかなんて気にしたこともないし、そもそも他人の服に興味もないわ。》

(洋服沢山持ってますねって言われたことあるでしょう?どう思った?)

《あるわ。そのとおりだから“そうね”とは言ったけど余計なお世話、余計な口だわ。・・・と言うか、どうでもいい事をよく見てるもんだわ、怖いなあって思ったかな?》

(そう、怖いのよ、人のは目・・・
どうでもよくないのよ周りの人は。
それだけ外見は重要だってこと。
興味ないという由紀さん方が珍しいわ。
洋服たくさん持ってますね、確かに由紀さんの言うとおり余計な一言だわ。
でもね、周りは見ているものなの。
美しい容貌にお洒落な服、素敵に着こなしているか。
すべてインターフェイスで判断されているのよ。
いつも違う服、お洒落で素敵な服を着ている。
いいなぁと思う気持ちが羨ましいという気持ちに変わり、いつの間にか嫉妬心に変わる。)

《それと今回、君江さんがしたことと何の関係があるの?》

(見てのとおり私は年よりも若いし綺麗でしょ。だから・・)

《もう、いいわ。面倒くさい。自分で美魔女だと思い込むのは君江さんの勝手。
証明はできないけれど、君江さん、貴方のしたことは犯罪よ。
君江さんの冤罪を晴らそうと思っていたけれど、もう辞めたわ。》

コンコン・・・ノック音と同時にドアが開いた。
「前回使用の面会室空きましたのでどうぞ」

前回の面会室に戻れば、私が窓を閉めてしまうことを懸念した君江は即座に答えた。
『いえ、ここで結構です。このままで・・』

「いえ、移動します。」

『由紀さん、待って!』

私を呼び止める君江の声に振り向くこともなく席を立ち、早足で前回使用した面会室に移動し、すぐさま窓を閉め、ブラインドを下ろした。
          010066_convert_20130106204639.jpg

はぁ、よかった・・・
これで君江の視線からも解放されたと私は安堵した。
その時、ガシャーン・・・・・・
何かが割れた音がした。

「いきなり何もないのに・・・366番が・・藤田受刑者が。」
血相を変えた職員が私の元に走ってきた。
職員は満足に話が出来ていないことにも気づいていない様子でかなりの慌てようだ。

「どうしたんですか?何かあったんですか?」

「いえ、何もないんです、何もなかったんですが・・」

私は職員と共に、先ほどまでいた面会室に急いで戻った。
看守が倒れている君江に「しっかりしなさい!」と声をかけている。
その傍には割れた窓ガラスの破片が飛び散っていた。

                  024037_convert_20130106204731.jpg


--------------------- しつこいくらい つづく -------- デス ----------------


またまたUPがこんなに遅い時間に・・・・
ごめんなさい。
遅いくせに毎度申し訳ありません。
下記にWポチ頂けるととても嬉しいです。
そして今夜も、呆れながらもついうっかり最後まで読んでしまわれた皆様
ありがとうがざいました。
また明後日の月曜日22時以降に更新いたします。
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先日の東京地方のドカ雪に、やっと見つけたスノトレも既に雪、殆どないし・・・
来週半ばにまた降る予報ですが、どうかな・・・
皆様も滑りにくいシューズのご用意、今年は必要かもしれませんよ~

明日の日曜日は少し暖かいそうです。
きっとよい日になりますように♪
皆様に素敵な1週間となりますように・・



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◆インターフェイス7

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----------- インターフェイス6 のつづき 7 ------間開けてしまいすみませんでした


君江の2つ目の窓を閉め忘れたことなど頭の片隅にもなかった私は直ぐに友人の弁護士近藤に連絡を入れた。

「君江さん、再審請求の意思だから、次回面会の時に一緒に行こう。」

「ああ、それはよかった。
今ちょうど、裁判資料に目を通していたところなんだ。これから会える?」

「大丈夫よ。
・ ・・・・・・・・
ええ、じゃ15時に事務所で。」


前回の面会の時もそうだったが、君江と会った後は、何故か非常に疲れるのだ。生気を吸い取られているような不思議な感覚と上から押さえつけられている様な感覚が相俟って身体中が倦怠感に襲われる。

医療刑務所のある駅から近藤の事務所まではJRを使えばそれほどの時間はかからないが、私鉄で行けば始発駅だ。
少し時間はかかるが、乗り換えをする駅は終点だ。
座って昼寝が出来る。
私鉄を使おう・・・

地下に入る私鉄の駅へ向かうと駅構内には既に発車時刻待ちの電車が停車していた。
昼間という時間帯のせいだろう、人もまばらな車内は思ったとおり好きな場所に座れた。

発車を知らせる音楽がホームに流れ、地下構内をゆっくりと動き出した。

走る電車の中、私は今回の面会でも聞き逃した金色のパンプスと「私じゃない。」と言った時の君江の瞳に映った青い炎、君江の精神的障害について考えていた。

金色のパンプスは真犯人につながる手がかりなのか?

君江自身もきっと気付かない無意識のうちに映し出しているのだろう、瞳の奥の青い炎は何を意味しているのだ?

君江は解離性障害と診断を受け、その他にも摂食障害、不安障害、虚偽性障害、妄想性パーソナリティ障害などの病気があることも承知していた。
しかし、身体醜形障害については聞かされていないようだった。
きっと、現在の君江にとって一番重い病は、触れられたくない部分であり、病名を告げれば間違いなく逆上するためなのだろう、尚美先生も君江本人には言わず、私もあえて口にすることはなかった身体醜形障害なのであろう。
瞳の青い炎と関連があるのだろうか・・・

ペランと紙のように薄く折れそうなほど細い君江だが、太ることを気にしている。
所内の散歩すら人目を気にし、化粧がしたいと言い外へ出ることを拒んでいた。
医療刑務所とは言え、刑務所であることに変わりはない。
受刑者の君江が化粧などできるはずもないのだ。
おそらく化粧をしないで外へ出ることは彼女の中では罪悪なのだろう。
ならば、ジャージ姿にスッピンで近所を歩く私など罪悪の塊どころか極悪人だ。
やはり君江は少しおかしいのか?
それとも私がおかしいのか?

車内の窓からは迷惑なほど眩しく陽射しが注ぎ込み、外の風景を直視することができないほどだ。
向かいの席に移動するのも面倒だ。
私はその強い陽射しを避けるように目を閉じた。
強い日差しは目を閉じる瞼にも明るさを通している。
やはり移動しようか・・・
と、その時、明るさを通していた瞼が暗さを捉えた。
きっと建物に遮られたのだろう。
うっすらと閉じていた眼を開けた。

「あっ・・・」
     
目を開いた正面の窓ガラスに、初めて君江の窓を開けた時と同じ“眼”が映っている。

(君江さん?)

ここは私鉄の車内だ。
わかってはいたが、自分の座っている席の背後を振り返った。
当然、誰もいようはずはない。車窓には振り返った自分の顔が写るのみだ。
再び正面を向いた。
正面のガラスに写った“眼”はまだ私を見ている。

私もその眼を凝視した。
?・・・???・・・
     329_convert_20130106202507.jpg

瞳の奥にはあの時の青色の炎ではなく、赤い炎が燃えている。

「あーダメだダメだ!これ以上はダメだ!切り替えなくては。」
そうなのだ。
私の興味は君江ではない。
君江の被った冤罪に興味があるのであり、君江の人格や病気に興味があるわけではない。
これ以上君江に呑まれてはダメだ。
尚美先生は私と君江が面会できるようになるまでの役目だったと君江は言った。
ダメだ、これ以上君江のペースにはまってはダ メ ・・あっ!・・・


私は何かすっきりとしない、誰かに見られているような重たい気分のまま近藤の事務所を訪ねた。

「こんにちは・・あっ、失礼しま・・あ れ?・・・あれ?・・・
・ ・・・・あの・・・コ・ン・ちゃん?」

「あれぇー?わかった?」

事務所のドアを開けると、ベージュのコートの襟を立て、こげ茶色のパンツに赤いパンプスを履いた男性?がドアを背にして立っていた。
私は先客の打ち合わせがまだ終わっていないのかと一瞬、入出を躊躇したが、よく見ると後ろ姿ではあるものの、近藤が女装をしていることにすぐに気付いた。

「どうしたのよ、その格好。 コンちゃん男色だけじゃなく女装趣味もあったの?」

「うふっ♪やあねぇ・・由紀ったら。趣味じゃなくってよ♪
お・し・ご・と! 後ろ姿で女に見えたぁ?」

「ああ・・実験してたの。一瞬ね。でもコンちゃんだって直ぐにわかったわよ。」

「なんだよ~がっかりだなぁ・・」

「最初は、まず頭部に眼が行き、その後は足下。
パンツだから女性なのか男性なのかは、やっぱり足下の靴で判断するわ。
パンプスで女性かなとは思うけど、私はコンちゃんのことよく知ってるから、よくよく見ればコンちゃんだとわかるわ。」

「ん~・・そうかぁ・・じゃあこのコートの襟は?このコートどんな形だった?」
近藤は、手に持つ、先ほどまで着ていたベージュのコートを指差した。

「コートの襟の形なんてわからないわ。後姿だもの。」

「だよなあ・・
まあ、座って。
あの後、色々調べたんだけどさ~・・・
由紀の言うとおり、この事件おかしな点がいくつもあるよ。
まず、被害者の二人、高木と宇山、評判悪いねぇ。
そもそもこの部署に問題があるのか、とにかく人の出入りが激しいよ。
それと2件とも目撃者で同じ会社の女性社員の高野まゆみ、これがかなりの曲者だ。」

その後、コンちゃんは調書にある目撃証言の矛盾点について話し始めた。


「高野まゆみの2件の目撃証言によれば、後姿からでも君江であると直ぐにわかったと証言した。
毎日同じ課で仕事をしているのだから間違いないとまで言っている。
百歩譲ってここまではいいとしよう。
だが、おかしなことに、高野まゆみが見たのは君江の後姿なのに“テーラーカラーのコート”だと言う。
今、由紀も言ったように後ろ姿から襟の形は確認できないはずだ。
にもかかわらず、テーラーカラーと言った。
なぜか・・
それは君江が黒のテーラーカラーのコートを持っていることを知っているからだ。
そして黒いコートは証拠品として押収された。
あとは金色のパンプス。
これは残念ながら防犯映像では確認できないし、目撃証言でも黒のパンプスと無難な線で収めているよ。
だけど、この高野まゆみは相当の搾取だよ。」

「ふーん・・でも私の聞いた範囲では、この高野まゆみさんって人、けっこう評判よかったけど・・」

「と、思うだろ?
違うんだよ。それが・・

表向きは人当たりもよく、新人が入れば優しく教え、表面上は周りへの気遣いも怠らない。
自分がやりたくない仕事は全て新人に押し付け、あたかも自分がやったように振舞う。
怖い先輩達のことは褒めておだてて自分に火の粉がかからないようにする。
まあ、世渡り上手ってとこだね。
ところが、
借りた物は返さない、お使いを頼まれ買い物に行っても請求するまでおつりを返さない。
請求すれば忘れていたふりをしてやっと返す。

以前、こんなことがあったそうだ。

この会社でチャリティーバザーが開かれた。
その時に着用する予定になっていたレギンスを高野まゆみともう一人、佐藤という女性社員が忘れてしまった。
予備を持ってきていた同僚が2人にレギンスを貸した。
それは、脇に特徴のあるステッチが施された1足4000円くらいのものだったそうだ。
レギンスにしては高価だよな。
佐藤さんは洗濯をして直ぐに返した。
高野真由美はその後3ヶ月を過ぎても一向に返却する様子がない。
同僚が催促すると「支給品で頂いた物だと思ってました。じゃ今度持ってきます。」と言ったがその後も忘れた振りを続け、返却されなかった。
高野は私服でもレギンスをよく履いていたが、同僚の貸したレギンスだけは絶対に履いてこなかった。
ある日、同僚が休みの日に会社に立ち寄ると高野はそのレギンスを履いていた。
貸した同僚が休みの日には履いて来ていたんだよ、確信犯だ。

それにもっと酷いのが、
新人が入ると、部内で集めている金がなくなる、もしくは足りなくなり、備品もなくなる。
細かい文具などを購入するために課では常に千円札や小銭で1万円分用意してある。
その雑費も高野は「私が今日、仕事に入る前に数えたら5000円足りなかったんですが・・」
「今朝、数えたら2000円足りなかったんですが・・」と、雑費が頻繁に不足するようになる。
新人が入る時に限ってだ。
当然、周りは新人が何かドジをやっていると思う。
けれど、高野が仕事に入る前に雑費や部費を数えていることなど、1度も見たことはない。
そのうち新人が辞める。
すると、金や備品がなくなるといったことも、なくなる。
ああ、やっぱりあの新人だったのか・・と周りの人は思う。
また新しく人が入ってくる。
しばらくすると、また金がなくなる。

こんな高野まゆみの行動に気付いたのは、レギンスを返してくれないと同僚から愚痴をこぼされていた君江だ。

君江は上司の高木と相談し、雑費や部費の全てを高木のデスク内で保管することにした。
高木は口が軽く、コロコロと意見を変えては周囲を翻弄させ、指摘を受ければ部下を守るどころか部下に責任を押し付け、機嫌が悪いと周囲に失当(八つ当たり)を繰り返すパワハラ上司として評判が悪い。
君江が高木を嫌っていたのは事実だが、そんな上司を嫌っていたのは君江だけではないはずだ。
それに君江はともかく、高木は君江を信頼していた。

ここで出てくるのが第二の被害者宇山美保子だ。

宇山は女子社員の中ではお局様的存在だった。
例えば飲み会を開く時、皆は焼肉がいいと言う。
通常多数決で決まる店も宇山が「私、焼肉が嫌い、臭いだけでも嫌」と言えば、店を変更した。
「私、煙草の煙が嫌い」と言えば飲み会も禁煙になった。
それは、ひとたび宇山の機嫌を損ねると大変だからだ。
1週間くらい不機嫌な日が続き、周囲に当り散らし雰囲気を悪くさせる。
皆はそれを嫌い、宇山の言うとおりにしていた。

当然、宇山は嫌われていたが、表面上は仕事をスムーズにこなすため、周りは宇山を立てていた。
そんなお局様宇山の転機が訪れたのは君江が入社する数ヶ月前のことだ。

宇山は社内の教育制度を利用し、資格を取得するための学校へ通うことになった。
本来は38歳未満のパートとしていたが、どうしてもとの宇山の希望を聞き入れ、社員からパートタイム勤務に変更すること、業務に支障を出さないこと、欠勤をしないことを条件に学校へ通わせた。
やはり二足のわらじは履くものじゃない。

当日、欠勤はするわ、体調を崩したと早退はするわ、挙句に、パートタイムとして勤務して週3日のうち隔週で週2日にして欲しいと言い出し、業務にも支障が出てきた。
そこで、高木は人員の補充をするため、宇山が取得しようとしていた資格を既に所有している君江をアドバイザーとして採用した。
君江はとにかく優秀だったらしい。
一度聞いたことは忘れない記憶力の持ち主で、細やかな気配りでクライアント受けもよく、わずか半年で顧客を倍以上にした。

面白くないのは宇山だ。

自分が抜ければクライアントも減り、業務も滞り困るであろうと思っていたが実際はその逆だ。
その上、高木の信頼を一身に受けていると勝手に思い込んでいた宇山は、君江の入社によって立場が危うくなった。
もともと少し精神不安定な面のある宇山は、高木の上司命令にも逆らうようになり、些細なことで逆上しては周囲を困らせていた。
そんな宇山に業を煮やした高木は宇山を戦力チームから外し降格させた。
やりたい放題、言いたい放題だった宇山の女王の座は、君江の入社によって崩壊したってわけだ。」

「でも、宇山はもう辞めたんでしょ?君江さんもいない。
だったら今、一番得をしてるのは、ずる賢い高野じゃない。」

「そうなんだよ。なっ、高野は曲者の搾取だろ。」

「・・でも、高野は目撃者でしょ?高野の目撃証言を崩さないと無実は証明できないわ。」

「僕は高野が君江を陥れるために虚偽証言をしていると思ってる。
これは高野に直接聞くしかないな。
それともう一つ、おかしいのはこの事件を担当した弁護士の田中先生。
何で控訴しなかったんだろう。そもそも一審で負けたのが信じられない。」

「国選だから身が入らなかったでしょ。
もう関りたくないって言ってたもの。」

「うん、聞いたけど、田中先生は普段はそんな人じゃないんだよ。
弁護士になる前は刑事事件専門の裁判官だった人だ。
体調を崩して裁判官を退官して弁護士になった人だからこの程度の事件はお手の物だよ。」

「へぇそうだったの。
刑事事件の裁判官は大変だって言うものね。」

「うん、下手したら人一人の人生を狂わせてしまう、かなりの重圧だよ。
だから凶悪事件となると判決文を書く2週間くらい前からピリピリしていて殆ど眠れないらしいからね。
それで体調崩す裁判官も沢山いるよ。」

「そう・・・田中先生、刑事専門の元裁判官だったのかぁ。
そうね、それならなおさらこの程度の事件を一審で負けるほうがおかしいわね・・・」

「そうのとおり!この程度の事件で裁判期間が長いのも変だし、精神鑑定を必要とするほどの事件でもないのに精神科医が出てきたり・・
おかしな事だらけだよ。」

「精神科医の尚美先生は田中先生の愛人なんでしょ? 」

「ええ?そうなの?」

「うん、だからこの事件を早く片付けようと精神科医と弁護士が結託して精神障害があるって診断したって。君江が・・・」

「君江がそんなことを・・・
君江はやっぱり頭がおかしいんじゃないの?田中先生は真面目生一本の人だ。
仮にそうだとしても、田中先生は独身だから愛人にはならないよ。
目撃証言にしても、君江の愛人説にしても人の口って言うのは恐ろしいものだね。」

「本当にね。口は災いの元とはよく言ったものだわ。」

(そう。今頃わかった?さあ、早く私をここから出してちょうだい。私じゃないんだから。)

「?なに?由紀?何か言った?」

「いいえ、何も・・何か聞こえたの?・・あっ!!!・・コンちゃん?」
  
        330_convert_20130106202553.jpg
     
 コンちゃんの瞳に、君江の瞳と同じ青い炎が写っていた。


------- 更新 間、開いたくせに つ づ く -----ごめんなさい------------

特に理由もなく、間をあけてしまいました、ごめんささい。
単に気分が乗らずサボっていました。
また明後日UPします。

呆れず今日もお付き合いくださる皆様の広い心に感謝です。
そして下記Wポチにも毎度、感謝です。
ありがとうございます。

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東京地方、慣れない大雪に足がパンパンです。
皆様、路面凍結には十分ご注意なさってください。
雪かきで足腰の筋肉痛にもご注意ください。
ではまた明後日に・・・
素敵な夜をおむかえください。

◆インターフェイス6

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-------------- インターフェイス5 の つづき 6 ------------------デス----------


数日後、君江の面会申し込みをしていた医療刑務所から連絡が来た。

「今回の面会申し入れは、棄却されました。」

「君江さ・・いえ、藤田君江受刑者が拒否したのでしょうか?」

「いえ、本人は面会を要求していますが、当所の判断で今回の面会は見送らせていただきます。」

「わかりました。後日、改めて申請いたします。」

やっぱり・・・・・


尚美先生は、私と君江を会わせまいと、君江の治療に悪影響を及ぼす恐れがあるとして私の面会申し入れを却下するよう上申したのだ。
君江は今のところ受刑者の一人だ。
その担当精神科医の申し入れとあれば、たとえ君江が私との面会を強く要求したとしても所側は却下せざるを得ないだろう。

これほどまでに尚美先生が隠したい事、イコール、真犯人に繋がる手がかりがあるということなのではないか?
心のどこかでこんなことになるのではいかと思っていた私は、面会却下との連絡にまたしても前進した気持ちになった。

早速、弁護士の近藤に連絡を入れると、近藤は少し困った様子で言った。
「確かに尚美先生の行動はおかしいし、怪しいけど、由紀が君江に面会できないとなると、弱ったなぁ・・・
君江に再審請求をする意思があるのかないのかさえも確認ができないなぁ。
いくら弁護士といっても、面識のない僕がいきなり面会を申請して万が一にも君江に再審請求の意思がないってことになると・・・ん~」

何か言い手立てはないものか、お互いに「ん~・・」と言ったきり数秒が経った。

「・・・・!・・・・そうだ!!! 一つだけ方法があるわ。
コンちゃんが直接君江と会う前に私が君江と面会して再審請求の意思を確認する方法。
うまく行かないかもしれないけれどやってみる価値はありそう。
待ってて、必ず面会できるようにするわ。
でも、もしダメな時はいい案をお願いね!」

そう言って受話器を置いた私は、すぐさま医療刑務所長宛に手紙を書くことにした。

刑事被収容者処遇法111条1項では受刑者の面会に関して ①〝親族〟の他に
②〝重要用務処理者〟と③〝受刑者の改善更正に資すると認められる者〟とある。
簡単に言えば、受刑者と面会できるのは、①の親族以外には、再審請求等の相談を受ける弁護士や支援者や、受刑者が経営する会社の業務処理や方針の相談をする会社関係者など②の重要用務処理者か、③の面会によって受刑者の改善更正に役立つ人物、例えば出所後の身柄の引受人や、釈放後にその受刑者を雇用しようとする者であり、いずれの場合も支障がない限り面会を許さなければならないとの定めがあるのだ。
弁護士の近藤(コンちゃん)は②の再審請求をする弁護士に該当し、私は再審請求をする支援者の②にも、そして、③にも該当する。

私は小さいながらもカウンセリングルームを開く心理カウンセラーだ。
尚美先生に隠していたわけではないが、予約が入った時にだけカウンセリングルームに出向き、それ以外は特に熱心に仕事をしていたわけではなく、精神科医でベテランカウンセラーの尚美先生に言えるほど満足に仕事をしていなかったため言わずにおいたことだった。

私は資格証明書のコピーとカウンセリングルームの所在地を記した名刺を添付し、君江の出所後、彼女の雇用を検討しているため、数回の面談を強く希望するとの内容で手紙を出した。
よほどの妨害がない限り、これで君江との面会は可能になるはずだ。

数日後、案の定、医療刑務所からは良い知らせが届き、2つ目の窓を開ける日が訪れた。

前回と同じように担当の職員が面会室まで案内してくれた。
案内された面会室は、前回の堅苦しい雰囲気の面会室とは異なり、木枠の窓に円形のウッドテーブルを挟み、2脚の木製の椅子が置かれた休憩室のような雰囲気の面会室だ。

                        032641_convert_20130112203105.jpg  
           

椅子に腰掛け待っていると、君江が連れてこられた。
君江は私を見ると微笑み、黙って腰を下ろした。
その微笑んだ顔見た看守は少し驚いた表情を浮かべた。

「君江さん、こんにちは。」

『こんにちは。また会えて嬉しいです。』

「私もです。今日は幾つかお尋ねしたいことがあって・・・
と、、、あの、席を外していただけませんか?」

前回、尚美先生と同行した面会の時には立会わなかった看守が、今回は部屋の隅に椅子に座り、面会に立会っている。
話を聞かれたくなかった私は、看守に離席を要求した。

「今日は立会いと言うことになっています。」

「刑事被収容者処遇法112条では、職員の立会いは“必要があると認める場合”のみに限られ、原則、立会いなく面会できるとされていますが、今日は君江さんの状態が悪いのでしょうか?」

「所長のご判断ですので。」

「では所長に、」

『由紀さん、大丈夫。それよりすみません、少し窓を開けて欲しいのですが・・』

 看守は黙って席を立つと、窓を少し開けた。

(由紀さん、聞こえる?)

「え?」《・・あ・・うん、聞こえる。》

(これで話が出来るから平気。)

《そうね、でもずっと黙って座っていれば逆に怪しまれるわ。
当たり障りのない話から始めるわね。》

(わかった。)

「えっと、君江さん食事はきちんと摂れていますか?」

『はい。』

《ちょっと、ちよっと、そんなに短く答えたら続かないでしょ。
何か適当に答えてくれないと。》

(ああ、うん、わかった。じゃ、この看守にも聞かせてやりたいことがあるから言うね。)

『食事はいつも療法食とかで実際はあまり美味しいものではありませんが、
労働もせずに3食頂けてありがたく思っています。』
(フフフ・・優等生の答えでしょ?)

《調子いいわねぇ。》

「そうですか。で体調はどんな?」

『あのババァ・・じゃない、えっと、尚美先生との面会がなくなりホッとしましたので気分もとてもよいです。』

「面会がなくなった?」

『はい。治療はこの中の医師と心理カウンセラーの由紀さんにお任せしたいと思います。』

「でも私は医師ではないので、治療はできませんが・・」
(ちょっと、適当なこと言わないでよ!私が今日の面会を取り付けるまでにどれだけ苦労したと思ってるのよ。)

『でも、こうして面会にいらしていただけるだけで、安定してきます。』
(知ってるわよ、だから、あのババァをお役御免にしたのよ。)

《ババァって・・口が悪いわね。尚美先生が聞いたら怒るわよ。
君江さん、尚美先生のこと嫌いだったの?》

(あんな強欲な嘘つきババァ大嫌い。
由紀さんとこうして会えるまでの間、使わせてもらってただけよ。)

《ふぅーん・・強欲で嘘つきかぁ・・・》

(そうよ、私の話しなんてまったく信じていないくせに、適当に聞き流して、
早く事件を片付けたいものだから、弁護士と結託して解離性障害だなんて病名付けて、貴方もそのほうがいいでしょだって。)

《でもなんで、弁護士と結託なんてする必要があるの?
弁護士が早く事件を片付けたいのはわかるけど、精神科医の尚美先生には理由がないでしょ?》

(大有りよ。あの尚美ババァは、あの弁護士の愛人なの。
由紀さん、法廷で何見てたのよ。)

《へぇーあの尚美先生がねぇ・・・ああ、それでね、今日の本題なんだけど、
私は君江さんが犯人ではないと思ってるの。
無実なのにここに入っているなんて、待ってるジュディも可哀想だわ。
それで、再審請求をしてみない?弁護士は私の友人の、》

(知ってる。キャバクラ好きの近藤でしょ?結構なイケメンじゃない。恋人?)

《まさか。学生時代からの友人よ。彼はね、キャバクラこそ通うものの、男色なの。彼のキャバクラ通いはカモフラージュと社会勉強みたいなものよ。
で、どう?再審請求する意思はある?》

(あるもある大有りよ。だって私じゃないんだもの・・・)

《わかってる。
でもなぜ、控訴しなかったの?国選弁護人じゃなくて私選弁護人に変えて控訴すればよかったのに・・》

(控訴で私選弁護人じゃお金がかかりすぎるもの。)

《だって、君江さん50でしょ?50まで独身でずっと仕事してきたのに貯金してなかったの?》

(美容につぎ込んでいたから。
私はいつも細くて、若く綺麗でいるのが当たり前。いなきゃいけないのよ。)

《どうしてそんなに拘るの?少し痩せすぎと思うけど・・》

(だから病気って言われたんじゃない。)

《解離性障害、不安障害、摂食障害、などなど・・でしょ?》

(そう!おまけに虚言性障害、妄想性パーソナリティ障害)

《・・それはちょっとあるかも・・》

(失礼しちゃうな・・由紀さんだから許せるけど他の人が言ったら許さないところだわ。)

《でも他人の嘘には敏感でしょ?そういう人はね、多少なりともあるのよ。》

(うん、確かに他人の嘘は直ぐにわかるかもしれないわ。)

《もっとも、君江さんの場合は霊感でわかるわね。
病気のことはともかく、次回の面会の時にコンちゃん、あっ、近藤弁護士のことよ。一緒に来るわ。》

(うまく行くかなぁ・・)

《やってみよう!
それで、この前言ってた金のパンプスって、犯人が履いていたっていう理解でいいの?》


「ん、うん!あの、お話がお済のようでしたら、もうよろしいでしょうか?
今日は面会が混んでまして・・そろそろ30分経ちますので・・・」

面会時間は原則30分以上と決まりがあるが、その日の混み具合や面会室の都合で面会時間は5分以上30分未満の範囲内で制限される。

傍目から診ればお互い黙ったまま、ただ顔を突合せ座っているようにしか見えない。
話がない、済んだと思われるのも当然だろう。
職員の立会いの場合は、面会の様子を録画、録音されるのが通常であるため、
私は次回の面会の約束を取り付ける言葉を加えた。

「最後に確認だけ、よろしいでしょうか?
では君江さんは、ここを出た後は職につく意志がおありですか?」

『はい、勿論です。由紀先生のところで働かせてください。』

「あと、もう一つ。再審請求の準備を進めてもよろしいですか?」

「お願いします。」

これを聞いていた看守が驚いた表情で私に言った。
「再審請求をするということですか?」

「はい。次回は再審請求の打ち合わせをする弁護士と一緒に参りますのでよろしくお願いいたします。」


この日、私は開いた2つ目の窓を閉じるのを忘れ、医療刑務所を後にしたのだった。


------------------------- つづきはまた次回 ---------------------------------

遅くなってしまいました、、、、、、
なんか間延びした感じになってしまいました、ごめんなさい。。
少しスピードUPします。
   ので・・・・・
今夜もWポチ、よろしくお願いいたします。
つまらないくせにお手数だけおかけいたします。
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お休みもあと2日。
乾燥し過ぎでそろそろお湿りが欲しいところですが、
成人式の日は晴れますように
(↑とっくに終わってるくせに?あっでも父兄ではありませんよ~!成人の皆様のために晴れます様に)

◆インターフェイス5

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--------------------------- インターフェイス4のつづき 5 -------- デス---------



君江との面会を果たしたことで、私はなぜ、見ず知らずの君江にこんなにも惹かれたのか、
その理由が判った。
それは、君江も私と同様におそらくこれまで封印していたであろう三つの窓を持っていたからだ。
きっと、以前、何処かで会ったような気がしたのもそのせいなのだろうと、まだその時は思っていたのだった。

君江と直接会い、話をしたことで私は封印を自ら解いてしまった。 
そして閉じていた君江が持つ三つの窓の一つを何の気なにし開けてしまった。

君江の三つの窓のうち一つが開いた。

              028665_convert_20130106202413.jpg


君江との面会を終えた帰り道、犯人はやはり君江ではないとある種確信めいたものを感じていた。
と同時に、気がかりな点もまた増えていた。

まずは尚美先生だ。
ジュディを迎えに行った時、尚美先生は「あっ・・」と、何か思い立ったように部屋から出て行ったかと思うと戻ってきた時には顔色も優れず、“約束を思い出したので直ぐに外出する”と言った。
そのため私は、あの日、ジュディの健康状態を聞くために尚美先生が時々ジュディを預けているという、先生の家のはす向かいにある動物病院に立ち寄るつもりでいることを伝える間もなく、早々に切り上げたのだが、
動物病院のガラス越しに見える、先生宅の玄関から先生が外出した様子は見られなかった。
そして、今日・・・
君江との面会を終えた帰り道、先生はずっと無言で何か考え事をしているようだった。
面会中もどこか君江のご機嫌を伺っているように写った。
初めて会った時の、堂々とハツラツとした明るい尚美先生とは明らかに違った。
お・か・し・い・・・・

君江はどうだろうか・・尚美先生を信頼しているのであろうか?
違う・・
“失せろ!善人面しやがって”確かに聞こえたあの声は君江の心の声だ。
君江は尚美先生のことを信頼などしていない。
善人面しやがってとはどういう意味で言ったのだろう。
先生から必要な物欲しい物はと聞かれ、君江の心が答え、私が言いかけてやめた
“金色の・・・・“・・・パンプス
金色のパンプスなど医療刑務所にいる君江が履いて歩くことなど出来ようはずもなく、必要な物であるはずはない。
金色のパンプスとは何を指すのだろう。
真犯人の手がかりか?

そもそも、君江に度重なるパワーハラスメントを繰り返した横暴で説教好きなパワハラ上司の高木は身長180cm体重100kgの巨漢だ。
たとえ気を抜いて歩いていたとしても、華奢な君江が簡単に突き飛ばせる相手ではない。
突き飛ばせば弾みで逆に跳ね返されてしまうほどの相手だ。
君江が犯人というには無理がある。

では陰口を言っていた同僚の宇山はどうだ?
ヒステリーで精神不安定な宇山は太めではあるが女性だから突き飛ばす程度のことはか細い君江にも可能だろう。
だが君江は、外見こそは華奢でか弱く見えるものの、実際は感情の起伏が激しい自信家だ。
そしてその顔は、決して人前では見せず押し殺す術も身につけている、1本筋の通った芯のしっかりとした面を持つ利口な女性だ。
どちらかと言えば、格上の自分が自分よりも格下のこのような類の人間を相手にするのは時間の無駄と思う自尊心の強いタイプだ。
それに彼女は相手を念じ失脚させるぐらいのことは簡単に出来るほど類稀な“念通力”という武器を持ち合わせている。
突き飛ばすなどの労力を使う前に念を使うだろう・・
だが、これは証明できない。

ああ、もどかしい・・

私の心は今会って来たばかりの君江に直ぐにでも会い話を聴きたいという思いにかられていた。

何か手がかりになるものはないのだろうか・・・


カチャ・カチャン、カチャ・カチャン

考えあぐねる私の前をそんな事はお構いなしと言った様子で、快速急行の通過待ちをする停車中の電車の中、手際よく中吊り広告を交換する音が響いた。

音のする方向を何気なく見ると交換されたばかりの中吊り広告が目に入った。
女性誌の広告だ。
誰と誰がくっついたの離れたのだのと、私にとってはどうでもいい事だ。
くだらない・・などと思いながらも見出しを目で追っていると、ある記事に目が留まった。

「正しい歩き方・・ああ、この先生、ついこの間テレビに出ていたっけ。
黒のレギンスにパンプ・・・ス・・あっ!!!もしかしたら・・そうか!!」

頭の中で一つの推測が閃いた。

ゴットン・・・
「次は城南台、城南台へ停車いたします。どなた様も・・」


私は急いで自宅へ帰り玄関ドアの鍵を開けていると、電話のベルが鳴っているのが聞こえた。
「ただいま、メメちゃん、ジュディ!」
ジュディは鳴っている電話に向かい、ウーとうなり、威嚇をしている。
「大丈夫よジュディ、電話が鳴っているのよ。」
ウー・・・

「はい、もしもし・・」

電話は医療刑務所から駅までの道程をただ無言で歩き、改札で「じゃ、また」と言って別れたばかりの尚美先生からだった。

「今日はごめんなさいね、帰り道、考え事していたものだから。
それでね、早速なんだけど、君江さんと会ってどうだった?
彼女がまだ犯人じゃないと思っている?」

「ええ、思っ・・」
(答えるな!答えてはダメだ!)あの声がした。君江の心の声だ。

「ええ、そう思っていたのですが、少し判らなくなりました。
もしかすると君江さんは嘘を言っているのかもしれません。それと・・」
君江は解離性障害などと言う病気ではないと言いかけて、やめた。

精神科医の尚美先生にとって、君江が犯人かどうかは重要な事ではないはずだ。
今別れたばかりの先生がわざわざ連絡をよこし、尋ねるほどのことではない。
ますますおかしい・・・

ある人物に連絡を取りたかったため〝キャッチが入った〟と言って急いで電話を切ろうとした私に先生は、
今回の面会で私が同行できたのは、治療方針が定まらず、かといって、刑務所送致は難しい君江の治療の一環として特別に優遇されたものであったため、これからは治療を最優先に考え、君江とは会わないで欲しいと言った。

君江は私を面会登録した。
私が希望を出せばいつでも面会できる立場になった。
それなのに会うなとはどういうことだ?

君江との面会前に先生が私に出した約束は3つだ。
2つは守った。
残りの一つはまだ手を付けていない。

ますますおかしい・・何かある・・・

会うなと言った尚美先生の言葉は、仮説でしかすぎなかった私の憶測を真実へと近づける後押しとなった。
この隠された真実を証明するには協力者が必要だった。
私は早速、学生時代の友人で弁護士の近藤に連絡を入れた。

「おお、由紀、元気だった?」

何不自由なく育った近藤は、学生時代からその裕福な暮らしぶりは板についていた。
弁護士となった後も、未だにキャバクラ通いに専念し、弁護士らしい仕事はあまりしていない。
彼の場合は、仕事が来ないというよりは、仕事を選んでいると言った方が正しい。
どんなに金を積んだところで、やりたい仕事でなければ決して受けない。
逆にやりたい仕事であれば利益などまったく考えずに受任する。
金に困っていない近藤ならではのやり方だ。
もっとも、金持ちにはいささか扱いづらい弁護士だが、私のようにお金のない人間からすればありがたく、頼りになる弁護士だ。

「コンちゃん、久しぶり。実はね、お金はないんだけれど頼みたいことがあって電話したの。」

「あははは・・金なんかいいよ、で、どんなこと?」


私はこれまでの君江の事件の全容を話し、君江が類稀な霊力の持ち主であると言うことも伝えた。
その上で君江と面会後に私の立てたある仮説について話をした。

「結論から言えば、犯人は男ね。」

「男?」

「ええ。それも女装が趣味の男よ。」

「あはははは・・女装が趣味の男かぁ・・それはいいや!
その仮説、面白い!聞かせて。理由は?」

コンちゃんは私の立てた仮説に興味を示してくれた。
気をよくした私は、今のところ推測でしかない仮説の根拠について事細かく説明をした。


それは、思い込み・・・思い込みは時に大きな間違いを引き起こす。
警察、検察、目撃情報、これら全ての思い込みによる誤認逮捕が真犯人を逃す結果となったのだ。
例えば、
君江の担当弁護士に紹介され尚美先生に初めて会いに行った時、尚美先生は私が君江に会いたがっていると言う情報を事前に知っていた。
はなから君江に関する質問だけと予想し、会わせてほしいと頼み込まれるであろうと思い込んでいた尚美先生は、私が最初にした「選んだ飲み物になにか心理学実験のようなものが含まれているのか」という質問に驚いた。
そして猫のジュディ・・
私はジュディという名を聞き、てっきり女の子だと思い込み、男の子だという考えは頭の片隅にも無かった。
ジュディを迎えに行った日、私は初めて男の子だと聞き、自分の思い込みに気付いた。
その時に尚美先生もまた“思い込み”という盲点に気付いたのだ。
なのに、それを黙っている。
理由までは判らない。だが、隠していることは事実だ。

この事件は主に目撃情報と防犯カメラの映像が君江逮捕の決め手となった。
しかし、この目撃情報も防犯カメラの映像も君江を犯人と断定する証拠とするにはかなり厳しいものだ。
いずれも後ろ姿だけなのだ。
君江はロングヘアーだ。
だが、ロングヘアーの女性がコートを着ると、髪の毛は当然コートの中に隠れる。
たいていはそのコートの中に入った髪の毛を両掌で首筋から外へ出すが、出さずにそのままコートの襟を立てる時もある。
コートの中に髪の毛が納まったまま襟を立てていれば後姿だけでは女性なのか男性なのか判らないことだってある。
なぜ、後姿だけで女性だと判断したのか・・
それはパンプスを履いていた。
金色のパンプスだ。
その足下で女性だと判断したに過ぎず、ヒステリーの宇山はともかく、巨漢のパワハラ上司の高木に怪我を負わせるほどの強い力で突き飛ばすには男性の力でなければ無理だ。
だから犯人は女装が趣味の金色のパンプスを履いた男。

こんな具合で私は女装趣味の男性犯人説を近藤に話して聞かせ、君江の再審請求に力を貸して欲しいと頼んだ。


「それでね、ごめん・・頼んでおきながら申し訳ないんだけれど、まとまった着手金も用意できないの。
それでも引き受けてくれるの?」

「当ったり前じゃないか~!
こんなに面白い事件みすみす他には渡せないよ。
再審請求で無罪判決になれば僕の名前もあがるってもんだ。
この事件、やってみる価値はあるさ。」

ある意味、変わり者の弁護士近藤は「面白い」と言って、金にならない私の依頼を引き受けてくれることになった。


やっと明るい兆しが見えてきた頃、君江の三つの窓のうち、二つ目の窓を開ける日が近づいていた。


------------------------- そして今日もまた つづく -----------------------

UP2日開けてしまったので、今日は少し長めです。
・・なんて、本当は切りいいところが見つからなかっただけでやんす。
お忙しいお時間、長々と申し訳ありませんでした。
でもまだ続きます。
ついで・・と申しましては何なんでございますが、下記にWポチ頂けると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
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三連休、2日間は暖かいそうです。
皆様、素敵な連休をお過ごしください。
私は・・布団でも干してこの小説もどきの続きでも書いて過ごします^^
明日もUPは20時以降になるかと・・・・・

後ほど、ご訪問伺わせていただきまーす。

◆インターフェイス4

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--------------------------- インターフェイス3のつづき 4 -------- デス---------

里親になることを決めた私はジュディを迎えに、精神科医でカウンセラーの佐々木尚美のクリニックを再び訪れた。

「ハァイ!由紀さん、待ってたわ。入って。
ふふっ、ほぉらジュディもお待ちかねだったようだわ。
ジュディはね人間の言葉がわかるらしいの。
由紀さんから電話を貰った時から迎えに来てくれるのがわかっていたみたいで、今日は朝からソワソワ落ち着かなくて。」

玄関に入ると待ってましたとばかりにジュディは私の足に擦り寄ってきた。
咽喉を鳴らしながら歩く足の間を行ったり来たりしながら歓迎してくれた。

「こんにちは。ジュディ、迎えに来たわよ、今日からよろしくね。
貴方の他にもう一人いるけど、女の子同士仲良くしてね。」

「あら、ジュディは男の子よ。」

「え?男の子でしたか・・名前からてっきり女の子かと。」

「ああ、そうよね。名前だけ聞くと女の子み・・・
あっ・・座って待ってて。」

「先生、どうされたんですか?」

尚美先生は不意に何かを思い立ったようにその場を離れた。
ジュディを話し相手に10分ほど経った頃、顔色の優れない様子で戻ってきた先生は、他に約束があったことを忘れていたのでこれから急遽出かけなければならないと私に告げた。
「ごめんなさい、いやあねぇ、最近どうも物忘れが激しくって・・
由紀さんのことは間違いなく、来週の面会の時に君江さんには話しておくから。本当にゴメンナサイ。」

「いえ、今日はジュディをお迎えに伺っただけですから、直ぐに失礼しようと思っていましたから、そんなにお気になさらないでください。ではまた。」

「ええ、今度、ゆっくり。由紀さんとは今後もお付き合いさせていただきたいわ。」


ジュディを我が家の子に迎え、当初心配していた先住のメメとの相性も良く、飼い主の心配は単なる取り越し苦労だったかと安心し3日が過ぎた。

リリリーン♪リリリーン♪
電話が鳴った。


「由紀さん、喜んで!
君江さんが貴方に是非、会いたいって言っているの。明後日の面会、一緒にどうかしら?ご予定は?」
電話の向こうで尚美先生の弾んだ声が響いている。

「え?もう?いいんですか?先生が面会して話をしてからじゃ?」

「実はね、君江さんに興味を持っている由紀さんだから言わなかったんだけど・・・」

先生の話しによれば、病気になったジュディの飼い主とは藤田君江のことであった。
ジュディは自分で飼い主を選ぶとても気位の高い気難しい猫であり、それを知っている君江はジュディが選んだ里親に是非、会いたいと言ってきたというのであった。
私は二つ返事で了承し、明後日の君江との面会の日を待った。


面会の日、君江と会うことをジュディに報告し先生との待ち合わせをした医療刑務所正門前に向かった。
それほど高くはない塀に囲まれた医療刑務所周辺には、少し離れたところにマンションや学校も立ち並び、ドラマで見るような刑務所の周辺とはやはり趣が違う。
正門から見る限りは、大きな国立病院か大学のキャンバスのようにも見える。

「ふふふ・・・由紀さん、早かったのね。」
正門に顔をつけて中の様子を窺う私の背後から尚美先生が笑いながら声をかけた。

「あっ、こんにちは。今日はありがとうございます。」

「とんでもない、こちらこそ。
里親さんに会いたがっている君江にわざわざ時間作っていただいて。
それでね、面会前に約束して欲しいことがあるの。
一つ目は、由紀さんが君江さんに興味を持っていて会いたがっていたと言うことは内緒。二つ目は、病気の話しなど、とにかく事件に関することには君江さんから切り出すまでは一切触れないでね。そして三つ目は・・・・・」

「わかりました。約束します。」

私は先生と3つの約束をし、君江と初めて直接会話の出来る機会に、緊張と期待感を持ち、医療刑務所の門をくぐった。

医療刑務所内には、受刑者の治療の一環として取り入れているのであろう、園芸のためのビニールハウスが設けられ、花壇には手入れの行き届いた草花も綺麗に植えられ、その他にも陶芸の釜などの設備も施され、職業訓練も行われているようだった。

看守の案内で面談室に入ると既に君江は別の看守と共に私達の到着を待っていた。
折れてしまいそうなほど細い君江の身体は法廷で見るよりもはるかに小さく見えた。
挨拶を交わした後、看守は面談室から出て行った。

「こんにちは、君江さん、調子はどう?ここでの暮らしで何か困っっていることはない?この方は・・」

“この方は”と私を紹介する先生の言葉をさえぎり、君江は座っていた椅子から立ち上がり私の方を向くと、一気に話し始めた。
『はじめまして。藤田君江です。この度はジュディの里親になっていただきありがとうございました。あの子は人間の言葉も状況も理解できるとでも頭の良い子です、それだけに不憫でなりませんでした。貴方のような方が里親になってくださって私もジュディもとても喜んでいます。一つ、お願いがあります。
ジュディが望んでいるのは私と共に暮らすことであって、里親と一生暮らすことではないので、私がここを出たらジュディを私に返していただくわけにはいかないでしょうか?どうかよろしくお願いします。』

君江は息継ぎもせずここまで言うと頭をペコリと下げ、再び椅子に腰を下ろし正面を向いた。

丁寧な言葉遣いではあるが強弱のトーンを付けず表情一つ変えることなく、同じ口調で早口に話す君江に、やや、戸惑いと威圧感を覚えながらも、私は頭の中で適当な答えを探していた。

「それは・・・
君江さんが退院した時にジュディに決めてもらうということでいかがでしょうか?」

「ああ、そうね、それはいい案だわ。
ねぇ君江さん、 それとも君江さんが何か他に案があれば・・どう?」

直ぐに良い返事をしなかった私に見せた君江の硬い表情を見逃さなかった尚美先生が、場を取り繕うために言った言葉であったが、私には先生が君江のご機嫌を取っているように見えてならなかった。

少し重たい空気が狭い面談室に漂い始めた。

「今日は天気がいいので、窓を少し開けましょうか?」

私は面談室の窓を開けようと窓際まで行くと、此方をじっと見つめている「眼」が窓ガラスに映った。

         029689_convert_20130108201037.jpg

  ???そんな馬鹿な・・・

再びガラスを見ると何も映ってはいない。

             023268_convert_20130108200724.jpg

どうやらこのところの寝不足がたたっているようだ。

私は、少しではなく、窓の開く最大のところまで開放した。

              2_convert_20130108203323.jpg

爽やかな空気が室内の隅々まで流れ込んできた。

君江が微笑んだ。

「気持ちいいわねぇ。ねぇ君江さん、少し外を散歩しましょうか?気持ちいいわよ。」

所内の散歩の時間も外へ出ようとはせず、何にも興味を示さず、投薬治療にも特段の効果が現れない君江の効果的な治療方法の糸口を探しだそうとした先生が君江を散歩に誘ったのだった。

『先生、私最近、少し太ったみたいなの・・・』

「そう?私にはそうは見えないけど。
君江さんが気になるのなら、それは運動不足のせいかもしれないわ。
少し散歩でもしたらきっと、すぐにまた痩せるわよ。」

『肌も荒れてきてしまって・・・散歩で他の人が私を見たらどう思うかしら?
年齢よりも更けて見られてしまうんじゃないかしら・・外へ出るならお化粧がしたいわ。』

「大丈夫よ。貴方の年齢は誰も知らないわ。
それに貴方は今のままで十分に綺麗よ。」

(嘘をつけ!
そんなこと思ってもいないくせに、口から出まかせ言いやがって!)

・・・・・・・?????・・・・・・・・

「さっ、行きましょ・・気分転換にもなるわ。」

(やだね!私は外なんて行きたくないんだ。早く失せろ!善人面しやがって!)

・・・?????・・・

確かに聞こえた。
私は開いている窓の外を振り返って見た。
誰もいない。
先生には今の声が聞こえていないようだ。
だが、今、確かに聞こえた。
誰だ?

君江と眼が合った。
君江は黙って私に微笑んだ。

「あ、あの・・今日、此方に伺う前に撮ったジュディの写真があるんですが、ご覧になりますか?」
動揺を悟られまいと、とっさにジュディの写真を取り出し、君江に見せた。

『あ~ジュディ・・・安心して寝ているのね、よかった。』

「ええ、すみません、ジュディちゃん、動きが早くて寝ているところしか写真撮れなくて。」

『そう・・まあ、ジュディはメメちゃんと遊ぶのが楽しくて仕方ないのね。』

????
私は君江に、まだ他に猫のいることを知らせていない。
そしてその猫がメメちゃんという名だということは尚美先生すら知らないはずだ。

薄気味が悪く、一刻も早くこの場から去りたい気持ちになった私は先生に言った。

「あ・・あの、よければ写真、差し上げます。
すみません、先生、ジュディもまだ慣れない私の部屋で待っているのは心細いでしょうし、今日はこの辺りで失礼して後日またということではいかがでしょうか?」

「そうお?君江さん、何か欲しいものや必要なものはある?」

『いえ、ジュディの写真をいただけたことで十分です。』

「金色の・・」

「?えっ?金色のって?なに?由紀さん・・」

「へっ?・・あっ、いえ、何でもありません。」やだぁ・・私ったら・・・

『由紀さん、またいらしていただけますか?』

「ええ、もちろんです。」

『よかったぁ・・嫌われたかと思いました。』

「いえ、そんな・・また、必ず。」


私は今まで自分でもよくわからなかった「藤田君江」という人物に強く引かれた理由がようやく判った。
それは私が長い間封印し続けていた“あるもの”だった。
そして、今日、藤田君江と会い、話をしたことで彼女の閉ざしていた窓をも開いてしまったのだ。

先生は何かを感じたのかもしれない。
いや、もしかすると、まったく別のことを考えていただけなのかもしれない。
だが、
医療刑務所を出てから先生と私は無言で歩いた。

徒歩10分程度の駅までの道程がやけに長く感じた。


-------------------------- 今回もまた つづく ---------------デス---------------


やだやだ、まとまらず更新遅くなってしまいました。
それでもまだづづく・・です。すみません。
その上、お手数までおかけいたしますが、下記にWポチいただけると
また頑張ります。よろしくおねがいいたします。
いつもお付き合いありがとうございます。
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今日は少し暖かく感じた東京地方、皆様の地域はいかがでしたでしょうか?
この暖かさも今日1日。
明日からまた寒くなりそうです。
体調など崩されませんよう、是非、暖かく、そして加湿をしておやすみください。
明日もよい日でありますように・・
何事もありませんように・・よいことだけがありますように・・

ではまた~ぁ

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