神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

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Posted by 空耳ロバ on

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◆ 誰かの置き土産 ◆

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一昨夜、閉じた思い出木箱を再び覗く。
Tのかつての面影を探すためではない。
木箱の中にはいくつものカラーボールが入っている。
半開きの蓋から一番手前にあった薄っすらと青白くなってしまったカラーボールを手にした。


一人暮らしを始め2ヶ月も経つと言うのに家具の配置が決まらないでいた。
置いては変え、変えては置き直しと、どうにも落ち着かない。
しかし、落ち着かない原因は他にもあった。

表札も変えてあると言うのに、ポストを開くと、前の住人宛と思われる郵便物が未だに投函されていることだ。
その郵便物の全てが請求書と言うことも仕事で疲れた体に一層の追い討ちをかける。
「あ~まただ。。。前人は一体どんな人だったのかなぁー、迷惑だな」そう思いながらも「私には関係ないこと、前の住人は半年以上も前に引っ越しているはず、そのうち、今は別の住人だと分かるだろう。」・・・私はどこか高をくくっていた。
だが、いつも誰かに見張られているような、そんな違和感も覚えていた。

落ち着かない日々の中、住み始めて3ヶ月程経っただろうか。
相変わらず家具の配置は決まらない。
夜な夜な家具を動かし眺めていた時『ピンポーン』ドアホーンが鳴った。
時計は夜中の1時を少し回っていた。
古いタイプのドアホーンだ。姿を確認することは出来ない。
「こんな時間に誰だ?家具を動かす音がうるさいと苦情か?イヤイヤそんなはずはない、私の部屋は1階だ。じゃあ誰だ?シカトしてしまおうか?」
そんな事を考えながら2,3分経過しただろうか。
ドアホーンは1度だけ鳴り再び鳴ることはなかった。
ソーッ・・・・
ドアに近寄り覗き穴からドアの外を確認するが、直ぐに応答しなかったからだろう、
既に誰の姿も確認できなかった。
 だが、その翌日も、その翌々日もドアホーンは殆ど同じ時刻に一度だけ鳴り、覗き穴から確認する時には姿はない。

「誰だ!!ったく!悪戯にもほどがある!今夜は怒ってやるからな!!!」

私は前住人宛に届く、半ば脅迫めいた請求書の事など忘れ、4日目の夜はドアの傍でスタンバることにした。
まるで私が張り込んでいることを悟るかのように、その日、ドアホーンは鳴らなかった。

静かな夜は2,3日続いた。

仕事仲間と一杯やり、帰宅したのは午前1時近くになっていた。
「あーまただ・・・」前住人宛の請求書が数通、ポストに入っている。
そのうちの1通は、来訪したのだろうか?
住所の記載はない、直接このポストに投函したようだった。
それらに目をやりながらドアを開け、部屋の灯りを点けた。
間もなく『ピンポーン』
!?
「今度こそ!!誰だ!!!」
ドアチェーンはそのままに、勢いよくドアを開けた。
・・・・誰もいない・・・・
コンクリートの階段を小刻みに昇る音がかすかに聞こえた。
ドアチェーンを外し、足音の聞こえた階段方向へ出た。が、姿はもう見えなかった。
「逃げ足の速いやつめ!同じマンションの住人の悪戯か・・・明日にでも部屋番号を確認しておこう」

翌日、部屋番号を確認しようと足音のした方向の階段を7,8段上がると、しっかりと施錠された鉄製の門で仕切られ、その先へは上がれないようになっている。
「おかしいな・・・」どうやら悪戯した奴が隠れるために上がっただけのようだ。

以降、夜中の『ピンポンダッシュ』の悪戯はなくなった。

相変わらず前住人宛の請求書は届くものの、深夜のピンポンダッシュの悪戯もなくなり、数ヶ月が過ぎ、それすら忘れていたある日。

休日だった私は久しぶりに料理でもしようかとガス台の点火ボタンを押した。
「あれ?火が点かない。ガス料金引き落とし出来てるよね?」通帳を確認する。
確かに引き落としされている。
もう一度点火ボタンを押す。やはり点かない。点火用の乾電池を交換した。
・・・点かない・・・
前回購入したガス台は直ぐに壊れた。大安売りの商品だったからと諦め、やや高いガス台を再購入したばかりなのにまた壊れたのか!
メーカーに電話をするが、サポートセンターは休日は営業はしていないらしい。
「使えないな・・・」
やむなくその日は外食をした。

外食を終えた帰り道、私の部屋に灯りが点いているのが見えた。
消し忘れたようだ。
部屋に戻ると灯りは消えていた。
「勘違いか?街灯が反射していたのか・・・」

数日するとガス台メーカーから新しい商品が送られてきた。
交換してもらったガス台は調子がよく、なかなかの使い勝手だ。
お湯を沸かしていた時、そのガスの火が消えた。
「あれ?」再点火しようにも今度は点火ボタンすら押せない。
どうやらまた壊れたらしい。
「これで3台目だ。何だ!まったく!中古を送ってきたのか?」
ここへ住み始めて間もなく一年が経過しようとしていた。

ピンポンダッシュの悪戯はされるわ、前住人宛の請求書は未だに届くわ、誰かに見張られているような感覚はあるわ、室内の灯りはしょっちゅう消し忘れるわ、ガス台は立続けに3台も壊れるわ、一人暮らしを始めてからと言うものどうも調子がでない。その上、心配性の母は毎朝・毎晩、電話をかけてくるはで、家にいる時よりも疲れる始末だ。
「そろそろ実家に戻るか・・・」

僅か一年の一人暮らしだったが、結構な荷物だ。
仕事が重なり忙しかったこともあり、身の回りの荷物の梱包が終わったのは引越し前日だった。
「今日でこの部屋ともお別れだな・・ピンポンダッシュの悪戯犯は誰だか判らずじまいだったな。あぁそうだ、お米屋さんにも挨拶しておこう」
マンション前の道路を挟んで、はす向かいの米屋でよく買い物をしていた私は引越しの挨拶に行った。

「こんにちわ」
米屋のおかみさんは私が慌しく出入りをしているのを見て察していたのだろう。
『引っ越すの?」』すぐさま私に言った。
「はい、いつもおまけして頂いてありがとうございました。また買いに来ます」
『あの部屋、どういうわけか、皆、1年位で引っ越しちゃうのよねぇ。何かあるの?』米屋のおかみさんは興味深げに聞いた。
「いえ、特には。ただなんとなく」
『そう・・・やっぱりあういうことがあったから長くいられないのかもね』
「?あういうことって?」
『あらッ!知らなかった?あの部屋に住んでいた男の人がガス自殺したのよ』
「・・・・・・・・」

そうか、そうか、そうだったのか。
いつも誰かに見られているあの妙な感覚も、消したはずの部屋の灯りが点いていたのも、深夜のピンポンダッシュも、一年以内に原因不明で3台ものガス台が壊れたのも、家具の配置がなかなか決められず落ち着かなかったのも全てそのせいだったのか!!!!

私は全身の血が一気に下がり鳥肌がたった。

引越し前日とは言え、こんな話を聞いたからには1日たりともこの部屋で過ごす気にはならず、不動産屋に鍵を預け、1日早く実家に帰った。


10年以上経った今でも家、部屋の四隅に盛り塩をしている。
そして魔除のおまじない(不運を幸運に変える)
「バリスリウスドゴフルビンセンチ 不運よ立ち去れ!」(3回唱える)と、バリス神のまじない言葉を唱えながら二度と手にすることはないであろう、青白く色の落ちたカラーボウルを木箱の奥底に閉まった。
後方に不気味な気配を感じた。。。

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