神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

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◆Keep out ~まやかしⅡ~1話

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--------- この物語は「まやかし」の続編 「keep out ~まやかし~Ⅱ」です--------------

             まやかし


高橋の父親が経営する会社が倒産し、セレブと言われ続けた高橋は一文無しになり、結婚したばかりの妻、多賀子と共にゼロからの出発を決意した高橋であったが、その後の二人の行方はわからないままだった。

久留美は会社に住み着く野良猫「ヒョウ」を連れ会社を退職し、4年後、夢であった弁護士となり、念願の事務所を構えた。

「ンナァーン・・ただいま。」

『あらやだ!その格好で出かけてたの?』

「まさか!
外ではちゃんと人間に変わったよ。第一、ネコがエレベーターに乗ってたらおかしいでしょ。
調べてきたよ、あの会社。
やっぱりセクハラはあったみたいだね。それだけじゃない、パワハラで体調崩して辞めた人も何人かいるよ。」

『そう・・やっぱり・・ありがとう、兵藤さん。』

「それより、お腹空いたよ。あれ、買ってきてくれた?」

『買ってきたわよ、はい、最上級のネコ缶。』

「ンナァーン・・」

野良猫だったヒョウは、今や久留美のかけがえのないパートナーとなっていた。
弁護士としてはまだまだ未熟な久留美ではあったが、心強いパートナー「ヒョウ」の助けを借り、なんとか平穏無事に充実した日々を送っていた。
そんな折、思わぬ依頼人が尋ねて来た。
その依頼人を見た久留美は思わず声を上げた。

『あっ!!!!!!』

「お久しぶりぃ~、いい事務所じゃない。」

『多賀子さん・・』

一文無しとなった高橋とゼロからの出発をした4年ぶりに再会する多賀子は、高価なブランドバッグを手に、益々華やかさを増し、ゼロからの出発は成功を収めていたようだった。


『エー!!!・・・不倫???高橋さんが!!!!!!
そんな人には見えなかったけど、わからないものですね。』

「高橋って誰よ?
誰のこと言ってるのかわからないわぁ。
これ、よく見て。
私の名前は“高見丹多賀子”ってなってるでしょ。」
こういいながら多賀子は離婚届を差し出した。

『“タカミニタガコ”・・さん?ご主人は“タカミニノボル”さん?』

「違うわ!
私は たかみに・たがこ で、夫は たかみに・のぼる イントネーション間違わないでね。
タカミニノボルとタガコ じゃ、名前からして高慢な感じに聞こえるでしょ。
いい?たかみにの“か”は発音を下げ・・」

『ああ、はい。わかりました。気をつけます。
それで、ご主人は不倫、つまり浮気をなさっていて、多賀子さんからの離婚にはすんなり応じたものの、慰謝料には応じなかったため、訴訟をしたい。
そういうことですよね?』

「ええ、そう。
それと、愛人にも慰謝料の請求できるわよね。お願いね。」

『それは出来ますが・・・
婚姻3年半・・・?
3年半って、高橋さんとはすぐに離婚されたの?』

「あったりまえじゃない!あんな男!
新婚旅行先に倒産の連絡が入って、成田に戻ってすぐに離婚したわ。
おまけにあの馬鹿男、スーツケースやアタッシュケースに名前を書いてあるものだから
新婚旅行先でも空港で「高橋さん」なんて呼ばれて、迎えを装って近づいてきた外国人に
まんまとスーツケースごと盗まれるし、届け出た警察では、麻薬所持で逮捕され取調べを受けていた男が
高橋のアタッシュケースに貼ってある名前を見て「タカハシ」と言う男に預けたなんて大嘘つくものだから私まで長時間足止めされて、とんだ目に遭ったわよ!
挙句に『そー言えば千鶴子が昔、アタッシュケースに名前書いてると覚えられて危ないわよって言ってたなぁ~』
だって!
ふざけてるでしょ!!!

やっとの思いで帰国をすれば、会社は倒産。
離婚したって文無しだから慰謝料も取れなくて酷い目に合ったわ!
セレブだの大金持ちだのって、まったくとんだ“まやかし”だったわよ。
こんなことになるなら千鶴子さんの調査なんてするんじゃなかった。
調査費用無駄にしちゃったわ。」

『調査?千鶴子さんの身元調査したんですか?』

「そうよ。高橋と千鶴子さんが付き合ってた時にね。
知ってた?
今だから言うけど、千鶴子さんって、実はあの北白河グループの一人娘で大金持ちの令嬢だったって?
それに引き換え、一流企業とは言え、サラリーマンの娘の私じゃ勝ち目はないじゃない。
だって、ほら、あいつ、ステイタス好きじゃない。
だから勿論、高橋には内緒にしておいたわ。
ところが、その後、千鶴子さんは心筋梗塞で亡なるし、高橋は文無しになっちゃうし・・ついてないわ、私・・・
で、お見合いパーティーで今の夫と知り合って結婚したのよ。
ねぇ、この慰謝料取れるわよね?」

『ん・・・でもこの金額はどうかな?
ご主人に1億、愛人に5000万って、多すぎないですか?
たとえ浮気が原因だとしても、婚姻期間も短いし、愛人にしても5000万は・・・』

「なによ!出来ないの?
夫は開業医よ。このくらい、私の受けた屈辱に比べたら安いもんよ。
愛人だって、こんなことがなければ私達は円満にいってたんだから当然よ!
それに証拠だってこんなに揃ってるのよ、勝ったも同然だわ。
それとも、もしかして・・離婚訴訟初めてなの?
やったことないんでしょ。」

私は多賀子の言葉にカチンと来た。
離婚訴訟は初めてだった。
だが、ここで初めてだと言えば、多賀子のことだ。
吹聴し、馬鹿にするに違いない。
確かに愛人との証拠写真もこれだけ揃っている。大丈夫だ。
『とんでもない、離婚訴訟はこの数年凄く多いのよ。
1年に何十回こなしてるかわからないわ。』

「じゃあ、お願いするわ。
ところで、久留美さん、弁護料負けてくれない?」

『・・・・』
4年過ぎてもやはり多賀子は変わっていなかった。

『多賀子さん、変わってないですねぇ。』
私はイヤミたっぷりに皮肉った。

多賀子は言った。
「うふふふ・・・
そうでもないのよぉ~。最近はこの辺りにお肉が付いちゃって・・
脂肪溶解注射でも受けようかと思っているところよ。
だから、そのためにも、ねっ!お願いよぉー・」

『・・・そういうつもりじゃ・・』
どうやら多賀子には私の皮肉は通じなかったらしい。

それよりもどうしようか、なんて答えようか・・・
この手の訴訟は調停に回ることが多いし、離婚訴訟は着手金と成功報酬込みで20万~50万としている先生方が多い。
労力の割には合わない仕事だ。
それにこの請求額では、当然、裁判所は満額認めないだろう。
でも、愛人に対して民事訴訟に持っていけば別件となり、着手金と成功報酬が貰える。
即座に損得勘定が働いた。

『請求額は私に任せてくれるなら、受けてもいいわ。
ただし、愛人への慰謝料請求の着手金と成功報酬は別途、頂くわ。これでよければ。』

「いいわ。
やっぱり久留美さんところへ来てよかったわぁ。分割でいい?」


はぁ・・やっかいな人の依頼を受けてしまったわ。
それでなくても離婚訴訟なんてお金にならないのに、その着手金すら負けてくれなんて・・その上分割だなんて・・・
いくら浮気の証拠が揃っているから勝てるとは言え、多賀子さん、お金持ってなさそうだし、やっぱり断っちゃおうかしら・・

「ンナァーン・・久留美さん、心の眼、閉じかかってますよ。」

『ヒョウ・・・そうね、仕事は自分のためにするものだったわ。
わかったわ。精一杯やるわね。ありがとうヒョウ。』

私は少し厄介ではあったが、多賀子の依頼を受けることにした。

数日後、多賀子のご主人への慰謝料請求額を1000万、愛人への請求額を300万に減額し、それぞれに訴状を提出した。


----------------- ひとまず つ づ く デス ------ mataatode -------------


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◆Keep out ~まやかしⅡ~2話

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------------------ Keep out ~まやかしⅡ~1のつづき 2 ---------デス------------



多賀子の要求する慰謝料は夫に1億、愛人に5000万という法外なものであったが久留美はその額を、多賀子の夫には1千万円、離婚原因となった愛人には300万円にそれぞれ減額し訴状を提出したのにはわけがあった。


たった一度の浮気のみが離婚理由で、わずか3年半程度の婚姻期間に1億もの請求は、裁判所が認めるわけもなく、多賀子の要求する額をそのまま提示すれば、裁判官からも“この弁護士は少しおかしい”と思われるに違いない。
そして、夫の浮気の証拠写真がそろっているにもかかわらず、請求額から少しでも減額されれば、多賀子は不満を言い、何を吹聴するかわからない。
久留美は初めて扱う離婚訴訟であったが、多賀子には、つい、見栄を張り、何十件と扱った経験があると言ってしまった手前、この訴訟は是が非でも勝たなければならなかった。
そのためにも、裁判所からも世間一般から見ても妥当な請求金額に押さえておけば満額認められる可能性も高く、多賀子から悪口を吹聴される心配もなく成功報酬も受け取れるであろうとの考えからであった。

なんとか多賀子を説得し、訴状を退出したのだった。

ところが、
訴状が到達するころになると多賀子は夫が慰謝料の話し合いに応じる姿勢があったとして、夫に対する訴訟を取り下げると言い出したのだ。

マニュアルを見ながらなんとか作成した訴状であったが、依頼人の意向であれば弁護士が勝手に訴訟をするわけにも行かず、やむなく夫への訴えを取り下げ、愛人周子に対する訴訟のみを行うこととなった。

『まったく!多賀子さんのわがままには振り回されたわ。
夫の訴訟は取り下げたのだから費用はかからないはずだって、夫の分の着手金は免除してくれだなんて!!!
挙句に愛人の訴訟が終わったら成功報酬にプラスして払うとか言って、訴状に貼った印紙代もまだ払ってくれないのよ!あったまくるわ!』

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「ナァーン・・・そうカリカリしないで。
そんなに怒ってたら本質を見逃すよ。これはきっと勉強になる訴訟になるよ。」


一方、訴訟を行う夫の愛人の方はと言えば、訴状を受領後、答弁書は提出されたものの、一向に姿を見せないまま3回の期日が過ぎた。
(*答弁書:訴えられた側が、訴状に書かれている内容を認めるか認めないか争うかなどの意向を裁判所に伝える簡単な書面。詳細な主張は準備書面というものを別途提出する。)

『どういうつもりなのかしら!
愛人のくせに3回も裁判をすっぽかすなんて!
だいたい、裁判所も裁判所よ!
これだけ証拠が揃っているんだから愛人の言い分なんて聞いてあげる必要ないのに、何で3回も空転にされながら待ってあげるのかしらね。
今度で4回目よ。どう思う?ヒョウ。』

「ナァーン・・・次回は来るよ、念入りに準備を進めておいた方がいいよ。
そうカリカリしてると大切なこと見落とすよ。」

4回目の裁判の日が訪れた。

愛人、“霧野 周子”は初めて出頭した。(裁判に出席することを裁判所では出頭と言います)

この人が本当に愛人なのか?

化粧ッ気のない顔に、肩甲骨辺りまである髪の毛を下の方で一つに縛り、グレー色の時代遅れなスーツに身を包んだ周子は、写真で見るよりも一層、地味な印象であった。

民事で本人が出頭するなんて・・・
愛人が巻き込まれているのに弁護士費用も出してあげないなんて・・
多賀子の言うとおり、“タカミニノボル”は相当なケチ男なんだわ。

「弁護士はつけなくていいですね?」裁判官が周子に尋ねた。

「はい、必要ありません。」ハッキリとした口調で周子が答えた。


どうやら愛人 霧野周子は、その身形から、相当な倹約家であり、ケチな“タカミニノボル”が弁護士費用を出してくれないものだから、自分で弁護士費用を出すくらいなら自分でやろうという心積もりのようだった。

独身だし、この外見からして相当、溜め込んでいそうだわ。
私は、愛人の慰謝料請求額をもう少し高くすればよかったと頭の中で電卓を弾いていた。

「ええっと・・全ての項目に争うとありますが、これでよろしいですね。」
裁判官は再び念を押した。

「はい。午前中に本日付で反訴を提起いたしました。」

午前中に反訴状?
(*反訴・・提起された訴訟に対し、同一訴訟内において反対に相手に訴えを起こすこと。その書面を反訴状)

準備書面も出さずにいきなり反訴するつもりなの?
弁護士も付けずに素人が?
これだけ証拠写真が揃っているのに私に勝てるとでも思っているのかしら。

「久留美先生、これが反訴状です。よろしくお願いいたします。」
周子は落ち着いた様子で私に反訴状を差し出した。

裁判官はその場で反訴状にサーっと目を通すと、
「はい、採用。じゃあ久留美先生、次回、反訴に対する準備書面提出して。」と言い、次回期日を決定し、あっという間に4回目の裁判は終了した。

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いきなりの反訴に面食らった私は、法廷でゆっくりと目を通すことのできなかった反訴状を手に裁判所を出た。
外はいつの間にか降り出した雪が道路に薄っすらと白線を引き、信号待ちをする私の身体を氷のように冷やした。


---------------------------- また あとで ----------------------------

間が空いてしまい申し訳ありません、
さらに「またあとで」でごめんなさい。
また明日UPします。
外は相当寒いです。是非、温かくしてお休みください。
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◆keep out ~まやかしⅡ~ 3話

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------------------ Keep out ~まやかしⅡ~2のつづき 3 ---------デス------------


事務所へ戻った久留美は、反訴状に目を通した。
愛人周子の反訴状には、此方の請求額よりも200万多い、500万の損害賠償請求が記されていた。

『何なのよこれ!!!
素人のくせに!反訴だなんて外見は地味だけど、やっぱり愛人だわ、図々しい。』

そこへ久留美の依頼で顧問先の会社に調査へ行ったヒョウが戻ってきた。
「ンナーアン・・・今日は寒いニャー!ブルブル・・ブルブルブル」

『あーヒョウ、お帰り。』

「ナーン・・道路や歩道も積もり始めてるよ。寒い寒い!ブルブルブル!!」

『そうなの。報告書メモしておいてね。あと、ここも行ってきて。』

「えー!!これから?こんなに寒いのに?それに今、帰ってきたばかりだよ!
自分の顧問先でしょ。たまには自分で行きなよ!」


『ダメよ。私は愛人周子からの反訴状をじっくり読んで戦略練るんだからそんな時間はないわ!
それにあの会社17時になったらすぐに閉めちゃうんだから、急いで!
いつも上等な缶詰、あげてるじゃない、早く行って! 』

「ナァナァン!!!
人使い・・猫使い荒いよな、まったく!クー寒い寒い。」


予想外の反訴に動転していた久留美はヒョウに八つ当たりをしたが、実際、ヒョウはクライアントからの受けもよく、また、ヒョウの調査は常に正確で、調査内容を綿密にメモし報告をしてくれる、そんな“出来る猫”ヒョウに頼りきっていたのだった。

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次回裁判期日には反訴状に対する準備書面の提出をしなければならない久留美は、幾度となく愛人周子の反訴状に目を通した。

『ふっ・・やっぱり素人だわ。
これじゃ、何が言いたいのかまったくわからないわ。
こんな書面で、よくも反訴をしたものだわ、図々しい・・』

「ナァーン・・そんなこと言わずに落ち着いてよく読まなくちゃ。
裁判経験少ないんだからいい機会じゃない。」

『なによ、ヒョウ・・さっきのことまだ根に持ってるのね。
そんなこと猫の貴方に言われなくてもわかってるわよ!』

「ナァーン・・・猫は昔から執念深いニャン」


再び、裁判の日が訪れた。

法廷内に入ると、一つに髪を縛り、時代遅れのスーツに化粧ッけのない地味な顔だが、どこか堂々としている愛人周子の姿があった。

裁判官が私に言った。
「反訴に対する準備書面、出してないけどいいのかな?」

「はい、この反訴状では言っている意味がわからない点がありまして・・もう少し整理して主張していただきたいんですが・・・」

「ん?そう?裁判所はこの反訴状で十分理解できるけど、久留美先生には理解できないかナァ・・」

これを聞いていた周子の口元が少し緩んだ。

なんなのよ!この愛人、態度悪いわね。素人のくせに!
少し躍起になった私は裁判官に申し出をした。
『被告人 霧野周子さんの反訴状でよく理解できない点がありますので、ここで少し質問の時間を頂きたいんですがよろしいでしょうか?』

「はい、どうぞ。今日は十分に時間を取ってありますから。」
裁判官は快く認めてくれた。

『エー・・・では・・・
反訴原告で本訴被告の被告人、霧野周子さん。
被告人は・・』

「はい!裁判官!」周子が挙手をした。

「はい。どうぞ。」裁判官が発言を許可した。

「久留美先生!
貴方、さっきから被告人、被告人って、失礼なこと言うんじゃありませんよ。
これは刑事事件じゃない、民事なんですよ!
弁護士ならこれくらいご存知でしょ。」

「うん、そうだね。
久留美先生、これは民事だから・・民事は“原告”“被告”だからね、以後、気をつけてね。」
裁判官も周子の発言の後押しをするように言った。

裁判官にまで注意を受けた私は一気に頭に血が上り、裁判官の前で恥をかかされた周子に腹が立った。

『じゃあ、被告 霧野周子さん!
貴方はこれまで3回も出廷をせず、いきなり反訴とはどういうつもりですか?理由を聞かせてください!』

「ああ、それね・・
裁判所には事前に連絡が来てたんで、特に問題ないですよ。上申書も提出してもらってたんでね。
反訴理由は反訴状で主張してるから、久留美先生、反訴状の内容よく読んで、わからないところだけ質問してね。」

再び素人の前で裁判官から注意を受けた私は不愉快になり、そのまま質問をつづけた。
『・・・はい・・・
霧野さんは愛人を否定していますが、貴方が原因で“高見丹夫婦”は離婚に至りました。
この7枚の写真から愛人だと言うことは明らかですが、それでも愛人ではないと言うんですか。』

「ふふ・・困りましたわ。
それも反訴状内で主張をしておりますが・・・」

「うーむ・・・久留美先生、もう少し反訴状を理解して欲しいのよ。」

「いえ、裁判官、私の書き方に問題があり、久留美先生がご理解できないのだと思いますので、書面と重複いたしますが、よろしければこの場をお借りして再度、お話させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「うん、そうだね。じゃあ悪いけど、久留美先生が理解できるように話してあげてくれる?」

私は顔が真っ赤になっていることが自分でもわかった。

「はい、ありがとうございます。では申し上げます。」
周子はこう言い、一拍置くと間髪を入れずに話し始めた。


「愛人だんて、冗談じゃないわ!

そもそもこの男はね、大学時代から私のことが好きだったのよ。
横柄で高慢で、その上、意地が悪くて・・・
その名のとおり、いつでも自分は高みに登って上から物言う“たかみにのぼる”はそんな男よ。
まあ、それでも医学部で将来は医者になるからと、学生時代は結構モテいたけど、私はそんなまやかしには騙されない。
こんな性格の悪い男、誰が!!!
私は大学時代からこの男が嫌いで何度も誘いを断わったの。

この男と再会したのは7ヶ月前。
父の介護が必要になった時よ。
総合病院からの紹介で、訪問診療をしている開業医の“たかみに”に会った。
直ぐにあいつだと判り、断わりたかったけれど、訪問診療をしてくれる医者を自分で探すのは困難だわ。
それでやむなく承諾し、あの男が父の訪問診療担当医として我が家に来ることになったのよ。
その証拠がこれ、診療記録よ。

私が独身だと知った“たかみに”は、父のことにかこつけては執拗に私を食事に誘い、電話やメールをしてきた。
その証拠はこの着信履歴とメールのバックアップデータよ。

それでも父がお世話になっているからと我慢もして、父の様態がいい時に1度、食事に付き合ってあげた。
その時の写真が7枚中4枚の同じ日に撮られた写真よ。
ところが2日後、父が急逝し、証明書が必要になったの。
その証明書の交付は医院の窓口で済むものを、あの男は私に会いたいが為に、食事をしがてら渡したいって言うものだから、証明書の交付を急いでいた私はもう1度だけ、食事に付き合ってあげた。
その時の写真が残りの3枚よ。

だからあの男がちょくちょく私の家に出入りをしていたのも、たまたま探偵が調査をしていた1週間の間に、2度、食事に行ったことも納得できるでしょ。
そして、もう一つ。
これは同時期の発信履歴とメール送信履歴よ。
私があの男に返信した履歴は1件もないでしょ。
これからも判るように、付き合っていた事実もなければ愛人だなんて事実無根だわ。

だいたい、愛人と言われるだけでも不愉快なのに、よりによって顔も見たくないほど嫌いな人間の愛人呼ばわりは心外だわ!
父が亡くなり、私もそろそろ仕事に復帰しようと思っていた矢先にこんな訴訟、名誉毀損もいいところよ!
そもそもこの程度の写真で愛人だと断言して賠償請求訴訟を起すのは、いささか軽率過ぎるんじゃないかしら、失礼にも程があるわ!

・・・とまあ、噛み砕けばこのような内容ですが、いかがでしょうか?ご理解いただけましたか?久留美先生。」

一見して地味な風貌から想像もつかないハキハキとした周子の説明に、ぐうの音も出ない私は、ただ黙っているしかなかった。

「理解できたね?久留美先生?
理解できたら次回準備書面、提出してね。」

『・・・はい・・・・』

まずい。
雲行きが怪しくなってきた。
多賀子の話では、夫が家に帰らなくなったのは、周子と出会った7ヶ月前からだ。
だが周子の話しは合理性を欠くところが一つもない。
証拠も揃っている。
それでも私は弁護士だ。
素人の反論にこのまま黙って引き下がるわけには行かない。
とにかく多賀子を呼んで話を聞くことにしよう。
私は早速、多賀子に連絡を入れた。


-------------------------- また 明日 -----------------です-------------

ごめんなさい。またまた続くデス。
明日UP少し遅くなります。

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登別地方の皆様に早く電気が復旧しますように・・・

かなりの冷え込みになって参りました。
ご体調には是非、お気をつけてお過ごしください。

明日も良い日になりますように・・・

ご訪問、深夜遅くになりますが皆様のところへお邪魔いたします^^

◆keep out~まやかしⅡ~4話

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------------------ Keep out ~まやかしⅡ~3のつづき 4 ---------デス------------



久留美から連絡を受け、慌てた様子で弁護士事務所を訪れた多賀子は裁判の経過を聞き、案の定、激高した。


「今まで何やってたのよ!!
この前まで、相手が3回も裁判を欠席しているから勝った同然だって言ってたじゃない!
反訴ってどういうことよ!相手が有利ってどうなってるのよ!!
どうしてくれるのよ!!!」

裁判官を前に周子の反論に何一つ主張できずに苛立っていた私は身勝手な多賀子の言い分に腹が立ち、つい、言い返してしまった。

『どうしてくれるのって・・・・
多賀子さん、こっちが言いたいわよ!
あの人は愛人でも何でもなかっったの!
多賀子さんの勘違いなの!!!!
それを“愛人”だの“不倫”だのって騒いで、慰謝料まで請求して・・・
裁判官の前で大恥かいたわ!
多賀子さんはこれきりかもしれないけど、私は弁護士なのよ!
今後もあの裁判官とは顔を会わせることだってあるだろうし、それに裁判記録は弁護士会の所蔵庫にも保管されるわ。
他の弁護士が読んだら私の評価が落ちることになるのよ!
どうしてくれるのよ!!』

「写真は証拠としては一番明確だって言ったのは久留美さん、貴方じゃない!
自分の出来の悪さを依頼人のせいにするなんて、最低の弁護士だわ!」

『とにかく、多賀子さんの勘違いは明らかだから、これでは反論できないのよ。
何も反論しなければ全て相手の主張が通り、裁判は負けるわ。』

「いいわよ!じゃあ取り下げるわよ!取り下げればいいんでしょ!
訴訟、今すぐ取り下げてよ!」

『反訴されてるのよ!取り下げなんて今更出来るわけ・・・あっ、、、』
そうか、そうだったのか・・・
相手から反訴を提起されれば此方の本訴は取り下げができなくなる。
だから、いきなり反訴に持っていったんだ。

「何よ、“あっ”って・・・
じゃあ、どうするのよ。私500万なんて絶対に払わないわよ。
そもそも、あんたが、愛人に慰謝料請求できるって言ったんでしょ!
何とかしなさいよ!貴方、それでも弁護士なの!!!」

『何言ってるのよ!
愛人に慰謝料請求したいから訴訟しろって言ったのは多賀子さんでしょ。
とにかく、次回は何か反論しないと・・・
長引けば証人尋問の可能性もあるし、その練習もしないと・・』

「証人尋問なんて私行かないわよ。何のために弁護士入れてんのよ。」

『証人尋問は関係者や当事者なの!自分で言い出した訴訟でしょ!
自分でしかけたことくらい自分で責任持ったらどうなのよ、多賀子さん!!!』

「偉そうに!
会社じゃ、あんた失敗ばかりして満足に仕事も出来なかったくせに、随分偉くなったもんね!
変わらないのはその地味でダサ~イ外見だけね!!!!」

多賀子は応接室のテーブルを〝バン〟と両手で叩き、怒って事務所を出て行った。


多賀子と言い争いになった久留美はイラついた気持ちのまま部屋に戻った。
部屋へ戻ると珍しくソファでヒョウが横になっていた。

             逵繧狗賢_convert_20121129224709

『ヒョウ、寝てるの?いいわねあんたは気楽で・・
はぁ・・・こっちは大変よ。
ねぇヒョウ、ちょっと起きてよ。
今から、多賀子の夫の“タカミニノボル”の調査して来て。
ちょっと!ヒョウ!!起きないと晩御飯、』

「ンナー・・今日は具合が悪いんだよ、少し休ませてよ。」

『あんたは猫なんだから、いつでも寝ていられるでしょ。
人間はやることが一杯あるんだから、早く!起きて!
ほらッ!ヒョウ!!!』

ヒョウが初めて怒った。

「ンギャー!!!フゥワアァァァァア!!!
いいかげんにしてよ!
いつだって僕は休み無しで久留美さんの言うとおりにしてきたじゃないか!
具合の悪い時くらい休ませてくれたっていいじゃないか!!」

『でも急ぎなのよ、今は人が足りないの!』

「そんなに人手不足なら人、雇いなよ!
猫の貴方に言われなくてもわかってるって、久留美さんもよく言ってるじゃないか!」

『感謝してるわよ!だからいつだって上等な缶詰、』

「もう、うんざりだよ!何が上等な缶詰だ!
人雇って人件費払うより、猫の僕なら無償で使えるから得だからでしょ!
この前だって、あんなに寒いのに帰ってきて直ぐにまた調査に行けって無理に行かせたり・・今までどれほど我慢してたと思ってるの!!
自分が疲れてる時は他人も疲れてる、
自分が寒くて出かけたくない時は僕だって同じだよ!
久留美さんはいつからこんなに思いやりのない人間に成り下がったのさ!」

『ヒョウ・・・そんなに怒らなくたって・・』

「久留美さんの言うとおり、僕は猫なんだよ!
たまには僕だって・・・
         閠・∴繧狗賢_convert_20121129224803
昔から猫はこたつで丸くなるのが猫の道ってもんなんだよ!」


ヒョウと言い争いをしていたその時、ドアをノックする鈍い音が響いた。

トントン!!トントン!

「あのぉー・・ビル管理会社の者ですが、ちょっとよろしいですかぁー」

『あ・・はぁーい。
ヒョウ、とりあえず一時中断!どこかに隠れて。』

「ええ・・どこどこ、、どこにしよう・・」

トントン!「よろしいですかぁー?」

『あっ、ちょっと今、着替え中なので・・
ヒョウ、早く早く・・あっ、ここがいいわ!』

「ン?ニャ?ここ?こんな安物のビニール籠の、」

『緊急事態なのよ、文句言わないで!』

「ンニャ・・ちょっと狭くな・・」
シュー・・カタン。
私はヒョウをロッカーの籠の中へ入れ、慌てて扉を閉めた。
       繝ュ繝・き繝シ_convert_20121129224036


〈 コトン・・ 〉
?・・・・・??
『アッ、お待たせいたしました。どうぞ・・』

「あーどうも、いつもお世話になっております。
私、ビル管理会社の者なんでが、実は、最近、猫が頻繁に出入りしてると通報がありまして・・・
迷い猫かもしれいと伺ったんですが。

『いえ・・見かけませんが、、、勘違いじゃないですか。』


ロッカーの籠の中でビル管理会社と久留美のやり取りを聞いているヒョウはジッとしていられない状況にあった。
〈 コトン 〉先ほどのこの音は、ヒョウが籠に入るか入らないかのうちに、久留美が慌てて扉を閉めた時に、はずみで籠の直ぐ隣に置いてある棚の上の香水瓶が倒れ、先ほどから香水がヒョウの頭に、籠の中に流れ込んでいるのだった。

          證励>繝ュ繝・き繝シ_convert_20121129224258

(ンナァっ。。この籠はビニールだから臭いが篭るニャ・・)
嗅覚の優れている動物にとって香水は普段でもかなりキツク感じるが、この日、体調の悪いヒョウには耐え難い悪臭であった。


「まあ、弁護士さんなんで規約違反と言うことはないと思いますが、えーと、このビルは動物持ち込み禁止なんで、もし、飼っているなら・・」


(ンナァー・・もう駄目ニャ!!!)
ヒョウはたまらず、ロッカーから飛び出した。

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        『あっ!・・・・』   「あっぁ!」


---------------------- また つづく ---------------デス--------------------


ちょっと長くなるかもしれませんが、もしかすると次回で最終話にするかもしれません。
こんな曖昧で、あつかましいのですが、下記に2ぽち頂けると嬉しいです。

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日々、とてもとても寒くなって参りました。
温かくしてお過ごしください(北海道の停電地域の皆様ごめんなさい)。

明日も良い日でありますように。。。
明日は全国に電気が届きますように・・・

◆keep out ~まやかしⅡ~5話

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------------------ Keep out ~まやかしⅡ~4のつづき 5 ---------デス------------


猫が出入りしているとの通報を受けたビル管理会社の係員が、久留美の事務所を訪れていた。
慌ててロッカーに隠れていたヒョウであったが、香水瓶が倒れ、ヒョウの頭上に香水が降りかかり、ヒョウは我慢できずにロッカーから飛び出してしまった。

「あっぁ!猫!!」ビル管理会社の係員が大声を出した。

大声に驚いたヒョウは開いているドアから一目散に外へ走って行った。
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『あっ!ヒョウ!!・・・どう・・さん』

「・・・?ヒョウ?どう?さん?ヒョウドウさん?猫?
兵藤さんって名前? 久留美先生、ここのビルは、」

「はい、お呼びでしょうか。」
何事もなかったかのようにヒョウは、今出て行ったドアから“兵藤”に姿を変えドアを開けた。

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ビル管理会社の係員は目を白黒させながら兵藤に行った。
「今、猫が走って出て行きましたよね。」

「いえ、僕は気付きませんでしたが・・」

「いや!確かに今、このドアから出て行きました。
いいですか、このビルは動物持ち込み禁止ですから、飼っているなら直ぐに出て行ってもらうことになりますからね。いいですね!」
係員は久留美と兵藤の顔を交互に見ながら念を押すように言った。

「はい、わかりました。」兵藤は淡々と答えた。

『ふぅー・・焦ったぁ・・』

「はぁ・・ビックリしたぁ・・」

『だからいつも言ってるじゃないの。猫の姿でウロウロしちゃダメだって。
もう!ヒョウ、気をつけてくれなくちゃ。』

「僕が人間の前では、猫にも人間にも変身できないこと知ってるだろ!」

『それは知ってるけど・・・
だから、適当に誤魔化そうとしてたのに、ヒョウがいきなり飛び出すから、慌てたじゃない!』

「そんなことしか言えないの?
香水かかって大丈夫だった?くらい言えないの?
僕は嗅覚が優れているんだ、どれほど辛かったか!!
それに僕は人間に変身する度、普通の猫の倍の寿命を使うってことも知ってるよね!
今、僕が幾つか知ってる?
猫なら6年目で40歳になるところだ。
でも僕はその倍、既に80歳だよ。

          IMG_NEW_convert_20121130181228.jpg

飛び出して怪我しなかった?くらい言ったっていいんじゃないの?
ふん!
僕がロッカーから飛び出した時、“こんなネコ知りません、どこから入ってきたのかしら”って言おうと思ってたくせに!」

『思ってないわ!』

「・・・嘘つき・・・
僕はただの猫じゃないんだよ。折角、変身したから出かけて来る。」

『出かけるって。具合が悪かったんじゃなかったの!』

「もう知らないよ!」

『何よそれ!投げ出すのね・・・
み~んなそう!面倒になると投げ出すのよねぇ・・・』

「よくそんなこと言えるね・・
“タカミニノボル”の調査すればいいんでしょ。
人雇えば・・タダで受けてくれる人・・・
いないと思うけどね。
それと・・・他の報告書も毎日読んでくれているんだよね?
大丈夫だね?
そこのメモも見てくれた?
アドバイザー募集してるとこあるって聞いてきたから行ってみるといいよ、25日までだから・・じゃ・・夕飯、いらない。」

久留美は勝てるとばかり思い込んでいた訴訟も一転、その望みは薄くなり、依頼人の多賀子からの強い言葉にイラつき、かけがえのないパートナーのヒョウにまで八つ当たりをする始末だった。

ヒョウったら、、あんなに怒らなくたっていいのに。。。
アドバイザー募集のメモは・・っと・・・
   
         007942_convert_20121130180936.jpg

ん~・・・・んん??
何なのよこれ!!!ふざけてるわ!!!
ヒョウったら、こんな仕事わざわざ聞いてくるなんて、なに考えてるのしら、怒りたいのはこっちよ!
夕飯いらないなんて感じ悪いったらないわ!ったく!
久留美はヒョウが残したメモをクシャクシャっと丸め投げ捨てた。
            丸めた紙

「夕飯はいらない」そう言って出て行ったヒョウだったが、それきり戻っては来なかった。


『ヒョウはどこに泊まってるのかしら・・行くところなんてないはずなのに・・・』

ヒョウのことは心配であったが、裁判の次回期日までにはあまり時間がない。
不慣れな訴訟の準備書面も書かなければならず、無料相談の当番でもあり、仕事を休むわけには行かなかった。
また、
機嫌が直ればそのうち帰ってくるだろうと高をくくっていた面もあった。

リリン♪リリンリリ♪

『はい、お電話代わりました、弁護士の久留美です。
兵藤は休暇中でございまして・・よろしければ私が・・あ・・
はい、では兵藤が出社いたしましたらご連絡いたします。』

『はい、では兵藤から連絡させていただきます・・』

『兵藤は・・・』

『申し訳ございません、兵藤は・・』

ヒョウが帰って来なくなってから3日が過ぎていた。
クライアントである顧問先とのパイプ役であった“兵藤”は久留美に代わり、小まめにクライアントに顔を出していたため、弁護士である久留美よりも信頼が厚く、かかってくる電話の殆どが兵藤宛のものであった。

もう!ヒョウはいつまでスネて帰って来ないつもりかしら・・
こんなに私が大変な想いをしてるというのに。。。
リリン♪リリンリリ♪
ああ、まただ。

『はい、お電話代わりました、弁護士の久留美です。
はい、はい・・・申し訳ございません。
?????
(困ったわ、先日の件って・・このクライアント、何を相談したのかしら・・)
えーと・・その件は・・・確認して折り返しご連絡いたします。』

面倒な作業はすべてヒョウ(兵藤)に任せ、ヒョウから毎日必ず目を通すように言われていた報告書を読むことすら面倒くさがり、その都度、口頭で聞くことしなしなかった久留美は、クライアントからのクレームも把握しておらず、ヒョウがいなければ一日足りとも満足に業務が回らない状態となっていた。
裁判所からも要求をされた準備書面も未だ書き始めてもいなかったが、対処方法を催促されたクライアントの相談内容も把握のできていない久留美はヒョウが詳細に記してくれていた報告書を読むことにした。
ヒョウが几帳面に記したクライアント別に五十音順にインデックスの貼りつけてあるノートを取り出し、拡げた。

『えっ・・・うそ・・・そんな・・・ヒョウ・・・・』

 白紙 めも  
            めも 

詳細に記されていたはずのヒョウの報告ノートは全て白紙になっていた。
この時、ヒョウがもう戻って来ないのではないかと感じ、
そして、
ヒョウと初めて会った時のあの記憶がよみがえってきた久留美であった。

・・・・・兵藤さんは掌に舞い降りる雪のようにすぐに消えてしまうのではないか・・・・・・


----------------------- ごめんなさい、つづき --------------デス-------------


やっぱり長くなりそう・・です。
長々とくだらない読み物申し訳ありません。
たぶん、あと2回ほどで終わります。
ついで・・と言ってはなんですが、、、
下記に2タッチ頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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皆様素敵な週末をお過ごしください。

外は冷え冷えです。
体調には十分ご注意ください・・

◆keep out ~まやかしⅡ~6話

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------------------ Keep out ~まやかしⅡ~5のつづき 6 ---------デス------------


ヒョウが記入してくれていたはずの報告書の文字は全てが消え、白紙のノートになっていたことに気付いた久留美は、その日から毎日ヒョウを探し尋ね、貼り紙をして歩き、仕事どころではなかった。

トゥル♪トゥル♪トゥル♪

!ヒョウの目撃情報かもしれない。久留美は急いで携帯を取り出した。
『はい、久留美です。』

「ちょっと!どうなってるの!
事務所に電話してもいつも居なくて・・」

『なんだ、多賀子さんか・・・・』

既に生活の一部として当たり前のように傍にいてくれたヒョウが突然いなくなり、
これまで面倒な作業は全てヒョウに押し付けていた久留美は、ヒョウの報告書がなければクライアントである顧問先の現状すら把握できておらず、
事務所へ出たところでクライアントからの相談にも満足に対応できないため、
ヒョウが消えてからは事務所にも殆ど顔を出さず、まるで空気の抜けていく風船のように成す術なく、時間が過ぎるのをただ自然に待つだけの無気力な日々を送っていた。


「なんだはないでしょ!
急用だからどうしても連絡取りたいって言って、やっと、携帯番号教えてもらってかけてるのに!
準備書面は出来上がったの?
次の裁判まであと5日しかないのに、何やってるのよ!」

『ああ準備書面ね・・出しても負けると思うけど・・・』
ヒョウの目撃情報かと勇んで電話に出た久留美は、多賀子からの連絡に落胆し、ぶっきらぼうに答えた。

「このまま反論もしないで負ける気?
なんとかしなさいよね、あんた弁護士でしょ!!」
普段から口調の強い多賀子の語気が一層強まった。

『何かしても負けるんだから、徒労に終わるわ。』
いつもなら多賀子の言葉に不愉快になるところだが、今の久留美にはその気力すら残っていない。

「何よその言い方!
素人に負けたら弁護士の恥よ!
素人相手に勝てない弁護士なんて仕事が来るかしら・・
何もしないでお金だけ取る最低の弁護士だって言いふらしてやるから!」

素人に負けるのは弁護士の恥・・・?
お金だけ取る・・・?
それまで無気力に話をしていた久留美だったが、多賀子のこの発言が琴線に触れた。


『お金だけ取るって言うのはね、払った人が言う事よ。
貴方のわがままで取り下げたご主人への慰謝料請求訴訟分の着手金、貴方が愛人だと勘違いして起こした訴訟分の着手金、それぞれの訴状に貼った印紙代、全く払ってもらってないわ!
素人に負けたら弁護士の恥?
そうよ、弁護士が素人相手に負けるなんて恥ずかしいわ!
だけど、霧野周子さんは愛人でもなんでもなかった。
それどころか貴方の夫“タカミニノボル”のことは顔も見たくないほど嫌いな相手だったの!!
反訴されても当然だわ!!
もう!貴方の横暴とわがままに私が今までどれほど振り回・・あっ!!
・・・・・・・・・・・・横暴とわがまま・・・振り回された・・・・・
ヒョウ・・・ごめん・・ヒョウ・・・・・・・』

「あっ・・って、また?今度はなに?ヒョウって何のこと?
あんた何、わけわからないこと言ってるのよ!
とにかく、裁判まであと5日だから何かしら反論してよ!いいわね!」
そういい残し多賀子は電話を切った。


横暴でわがままで相手を振り回しているのは私も一緒だった。
ヒョウを都合よく使い、自分の所有物としてただ自由していただけだった。
私は多賀子の言うとおり最低の・・弁護士じゃない、最低の人間だ。
ヒョウ・・・ごめん。
ヒョウ・・兵藤になんてならなくていい、ただの猫のヒョウでいい、早く帰って来て・・・・・

勝てる見込みのなくなった裁判に投げやりな気持ちになっていたが、わがままな多賀子の裁判を精一杯やり遂げることでヒョウが戻って来るような気がした私は、早速、反論書面の作成に取りかかった。

それからの久留美は、再び、ヒョウの捜索ポスターを片手に事務所と家の往復の時間を利用し、チラシを配布し、事務所へも出勤した。

   はぁ・・・またか・・・
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最後まで残っていた顧問先からも契約の打ち切りを申し出られ、ヒョウがいなくなり1ヶ月と経たないうちに、とうとう顧問先は1件もなくなってしまい、やる気を取り戻しつつあった久留美には厳しい現実が突きつけられていた。

(ふっ・・自業自得だわ・・
自分のことなのに面倒なことは全てヒョウに押し付け、楽をしていたのだから・・・)

ヒョウに関する有力な情報がないまま裁判の日を迎えた。


朝から降り出した雪で交通機関は大きく乱れ、久留美が法廷に着いたのは裁判開始時間を15分ほど回った頃だった。

「はっはっはっは・・・」
「ほほほほ・・」
法廷の廊下に笑い声が響いていた。

コンコン・・
『申し訳ありません、電車・・???
あっ、、すみません。部屋間違えまし・・あれ?』

法廷の扉を開けると正面には既に担当裁判官が着席し、その右側には、ふわりとした巻き髪に化粧の香り、シックでお洒落なブランドスーツに身を包んだ霧野周子が着席し、談笑をしていた。

(本当にこれが?この人が?今まで地味で時代遅れのスーツを着ていたあの霧野周子なのだろうか?
こんなに綺麗な人だったの? 同一人物なのだろうか?この訴訟は驚かされることばかりだ・・
一体、どうなってるんだ。。。)
ポカンと口を開けてを見ている私に裁判官が声をかけた。

「ああ久留美先生、雪の中、大変でしたね。」

『へっ???あ・・・いえ、とんでもありません、遅れて申し訳ありませんでした。』

「じぅあ始めましょうか。
えーと・・久留美先生が反論の準備書面出してくれたんだけど、ん~・・
これねぇ・・・
これによれば、依頼人の“タカミニタガコ”さんは、これまでも前夫の負債を抱えるなど異性運に恵まれず、今回の婚姻でやっと幸せを掴み夫“タカミニノボル”氏に尽くしてきたがが、
1年ほど前から夫は仕事を理由に度々、外泊するようになった。と・・・
その頃より、夫の態度は急に妻多賀子に冷たくなり、数ヶ月前より全く帰宅しなくなったことから、
妻は体調を崩し、浮気を疑うようになり、調査をしたところ、丁度その頃、本訴被告・反訴原告の霧野周子邸に頻繁に出入りをする夫の姿を確認し、通常の精神状態ではなかった妻多賀子は霧野氏を愛人と思い込んでしまった。・・こういうことでしょ?」

『はい、そうです。
多賀子さんはこれまで異性運が悪く、今回の結婚生活をとても大切にしてきましたが、』

「うん、それは判ったけど、それで反論は?」

『・・・?(反論?この書面じゃ不十分ってこと?)
あっ、ですから、異性運の悪かった多賀子さんは、普段の精神状態ではなかったので霧野周子さんを愛人と思い込ん・・』

「はい、裁判官、よろしいでしょうか。」周子が挙手をした。

「はい、どうぞ。」

「すなわち、本訴原告・反訴被告は、異性運の悪い多賀子さんが本件訴訟を提起したのは精神状態の問題であるとのご主張かと思いますが、これでは反訴の反論にはなりません。

異性運が悪いのは自分が変わらないから。
自分が変わらなければ選ぶ相手はいつも同じです。

反訴被告の異性運が悪いとの主張は本件訴訟には全く関係のない反論です。
そして、精神不安定
こちらを主張するのであれば通院先の診断書等、証拠を添付する必要があり、診断書もなく、ただ普段の精神状態ではなかったでは、裁判の主張にもなりません。

これは、異性運の悪さと精神状態の不安定とを理由に情に訴え、争点を曖昧なものにするものであり、反訴に対する反論とならないだけでなく、不当に本件訴訟を混乱させるものであります。
いかがですか、久留美先生。」

周子の雄弁にポカンと口をあけて聞き入っていたが、不意に些事を投げかけられた私は、つい返事をしてしまった。
『はい、そのとおりです。』

「はっはっはっはっはっは・・」
裁判官が笑い出した。
それに連られたように私も苦笑いをして誤魔化した。
そして裁判官は笑いながら切り出した。

「えーと・・・久留美先生もわかってるんだよね?
さっき、霧野さんに聞いたら、本訴を取り下げるなら反訴を取り下げてもいいって言ってくれたから、どうする?
まあ、このまま続けるって言うならそれでもいいけど、裁判所は霧野さんの言ってるとおりだと思ってるから、どちらが得かよく考えて。」

(反訴を取り下げてくれる?ヤッター!!!)
此方の敗は決まっているようなものだ。
本訴を取り下げ、この訴訟自体なかったことにしたいと思っていた私は考えるまでもなかった。

躊躇なく答えた。
『はい、取り下げます。』

「うん、じゃあ、双方、訴訟取り下げの和解と言うことでいいね。」

「はい、結構です。」『お願いします。』

「・・・判決を言う・・・
原告は本訴を ~ ~ ~ ~ ~ ~
被告は反訴を ~ ~ ~ ~ ~ ~ 」

(?????? 双方共に訴訟を取り下げたのに〝判決〟なんて言うの?
取り下げたからこれではいおしまいじゃないの?
訴訟が開かれた後は取り下げても和解ってことになるんだぁ・・へぇー・・・
じゃあ、私の出したトンチンカンな準備書面も記録され所蔵庫に収められちゃうってこと?エーやだぁ、恥ずかしい・・・)
私は上の空で判決を聞いていた。

「・・・・以上」

(?あれッ?終わった?聞き逃した・・・
あとで送ってくる判決書で確認すればいいか)

「じゃあ、久留美先生、霧野さん、取下書提出して帰って。」

「はい、承知しました。」すかさず周子が答えた。

(???取下書?
双方取下げの和解判決もらっても取下書って必要なの?
裁判開かれる前の取下書しか書いたことない。どうやって書いたらいいの・・)

一礼をして裁判が終わった。

法廷を出たところで私は周子に声をかけた。

「あの・・この前まで取り下げる気はないって言ってましたが、なぜ、今日取り下げる気に?」

「ふふふふふ・・・
だって、この訴訟、私が取り下げなければ、久留美先生、初めての単独訴訟で完敗するところでしたでしょ。
貴方の一番嫌いな“素人相手に負け”の記録が残るでしょ。」

『完敗って・・そんなの最後まで判らないじゃないですか。』

「あの訴状と準備書面じゃ・・
貴方、地位・名誉・権力に相当弱いでしょ?」

『失礼なこと言わないでください。私は弱者の味方になるために弁護士になったんです。』

「ほら・・その〝弱者〟って言い方。上から見ている証拠よ。
この訴訟での失敗は、まず、貴方は“愛人”という言葉に騙された。
〝愛人〟と聞いただけで相手を低く見た。
そして、裁判期日を初回から3回、欠席したことで貴方は勝手に優位に立っていると思い込み、相手は素人だと、はなから甘く見てかかった。
そして反訴を・・」

『いいかげんにしてください。なんなんですか!
私は弁護士なんですよ!そんなこと素人に言われたくないわ・・』

「ふふふ・・重症のようね。
本日付で復職した弁護士の“霧野 周子”です。よろしく。」
そう言いながら、私に名刺を差し出した。

『弁護士?だったんですか・・』
そう言えば、弁護士になったばかりの頃、法廷の女王、訴訟の女王と言われていた、負け知らずの弁護士がいたと・・・
医療過誤裁判を最後に突然、弁護士を辞め消えたと噂で聞いたことがあった。
その弁護士が霧野周子だったのか・・・

「ええ。
私は貴方にこれまで何度もサインを出したわ。
たとえば、
裁判を欠席する際に上申書の提出をしたり、民事事件は〝被告人〟とは言わないとか・・・
でも貴方は一向に気付かなかった。
それは相手が素人だと思い込み、馬鹿にしてかかっていたからよ。
仮に、素人だとしても、今はあらゆるところで簡単に情報入手が可能な社会だから、下手をしたら弁護士よりも遥かに詳しかったりもするわ。
それに、その人の周りにはどんな知り合いがいるかわからないでしょ。
人は、目に見える地位や権力、名誉にはとかく弱いものだけれど、どんな相手に対しても侮ってはだめ。

今まで噛み付いていた貴方が、今、私の話を黙って聞いているのがいい証拠。それは私が弁護士だと知ったから・・でしょ?
心の眼を閉じたままでは本質を見逃すわよ。
外見で人を判断してはダメ。
まっ、でも、しばらく弁護士業務から遠ざかっていたから今回の訴訟はいいウォーミングアップだったわ。じゃまた・・」

『あの・・霧野先生、弁護士会を退会なさったのっていつ頃ですか?
なぜ辞めたんですか?』

「理由なんてないわ。やりたいこともなかった。
ただ、俗世間が嫌になって6年前に弁護士会を退会して修道院に入ったの。
もともとカトリックだったから。
入ったからと言って直ぐにシスターになれるわけじゃないのよ。
2,3年の修練期を経て、初誓・・いわばシスターの見習いってとこね。
やっとそこまで来た時に父が病気になって、介護の必要な身体になったの・・
随分と迷ったけれど、私はやっぱり俗世界を捨てられなかった。
奉仕よりも一番傍にいる身内を選んだの。

でも、奉仕活動はいい勉強になったわ。

初めはありがたいと思っている好意が、いつしか当たり前になり、少しでもやらなければ不満に変わる・・・人ってそんなものよ。
貴方にも心当たりがあるでしょ?
・・で、改めて弁護士会に登録し、今日から俗世間に逆戻りよ。
また法廷で会える日を楽しみにしてるわ、じゃね!」


心の眼を閉じたままでは本質を見逃す・・・
初めはありがたいと思っている好意が、いつしか当たり前になり、少しでもやらなければ不満に変わる・・・貴方にも心当たりがあるでしょ?
周子のそんな言葉がいつまでも耳に残った。

確かに心当たりがあった。
ヒョウの言ったとおり、人件費がかからないのをいいことに、好意のみで手伝ってくれていたヒョウを当然のように使い、自分の思うとおりに動かなければ不満を言い八つ当たりをした。
実際はヒョウがいなければ何も出来ない自分に気付かずに、自分だけが忙しい振りをしていた。

ふっ・・今更後悔したって遅いわよね・・・

エレベーターホールへ向かう法廷の廊下がやけに広く感じた。


(心の眼、閉じてましたね。開くのにはもう少し時間がかかりそうですね。)

「???ヒョウ?ヒョウなの?」
久留美は辺りを見回した。確かにヒョウの声が聞こえた。

もしかしたら、戻ってきてくれているかもしれない・・

久留美はエレベーターには乗らず、大急ぎで階段を駆け下り裁判所の出口へ向かった。

「今日はホワイトクリスマスね。」

『えっ?・・あっ、霧野先生。お帰りになられたのかと・・』
先に帰ったはずの周子が後ろに立っていた。

「久留美先生は〝霧の摩周湖〟って行ったことある?
ふふっ・・・メリークリスマス!」

『はっ?あ・・メリー・・・ん?
霧の摩周湖?キリノマシュウコ・・きりの・霧野・・周子???うっそー!』

周子はクスっと笑うと歩き出し後姿のまま左手を挙げ、立ち去った。

最初に見た、化粧ッ気がなく時代遅れのスーツに身を包んだ地味でさえない周子とお洒落なブランドスーツに巻き髪をふんわりと揺らす、華やかな美貌の持ち主の周子・・
どちらが本物の周子なのか、もしかすると、どちらもまやかしなのかもしれない・・周子の後姿を見送りながら、ふと、そんなことを思う久留美であった。

自宅へ戻った久留美は、クリスマスイヴをヒョウと祝おうと準備していたシャンパンをあけ、ヒョウの帰りを待っていた。
深夜になり街の明かりが消え入る頃、窓辺に置いた蝋燭の明かりは開封されただけのシャンパンを一層、明るく照らしていた。

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 ヒョウ・・・・


------------------------------ つづく 次回 最終話 -------------デス-----------


バランス悪く、この回長~くなってしまいました、ごめんなさい。
挙句につづくですみません。次回最終話にします。
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一段と冷えて参りました。
今週はますます寒くなりそうですね。
体調には十分注意して1週間、元気にお過ごしください。
また明日UPします。

◆keep out~まやかしⅡ~最終話

Posted by 空耳ロバ on   0 comments   0 trackback

-------------------- keep out ~まやかしⅡ~最終話 ----- デス-------------

ヒョウ・・・
久留美は減ることのないシャンパンを見ながらヒョウの帰りを待っていた。

こんな雪の中、ヒョウはどうしているかしら・・・・


そう言えば、夢を掴むために会社を辞めようと決意したのも、こんな風に雪の降るホワイトクリスマスだったなぁ・・・
あれから4年、夢を掴み弁護士にはなったけれど、ヒョウの言ったように私はいつのまにか思いやりのない人間になってしまったのかもしれない・・
弁護士という肩書きだけで自分は普通の人とは違う・・なんて・・・
横柄になり、霧野先生の言ったとおり上から見ている嫌な奴に・・・・


『そうだ!』
久留美は大好きだった先輩、千鶴子を思い出した。

ヒョウが兵藤になり、初めて一緒に食事に行ったレストランテラスの郵便ポストから投函してくれた、
生前、千鶴子が記した久留美宛の手紙を久留美は弁護士となった年に初めて購入した六法全書に挟み、大切に保管していた。
そして辛いことがある度、その手紙を何度となく読み返していたのだった。

『ええっと・・・あったあった。』
手紙を挟んでいる六法全書を取り出した。

『・・・・・・・・・ヒョウ・・なの・・・・』

挟んでいたはずの、あるはずの千鶴子からの手紙が消えていた。
それは、ヒョウがもう二度と帰って来ないことを確信した瞬間でもあった。

どんなに後悔してもどんなに謝っても遅すぎたのだ。
ヒョウはもう二度と帰ってこない・・
久留美は涙があふれてきた。
(ヒョウ・・ごめん・・ヒョウ・・)

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「久留美さぁん、久しぶり!元気だった?」
『あら、佳子さん。』

「どうしたの?今日はこの辺りで仕事?」
『そうじゃなくて・・あのね、猫を探してるの。
以前、この辺りに住んでた猫だから、もしかしたら戻ってきてるんじゃないかと思って・・・
それで貼り紙して歩いてるの。見かけたら連絡して。』

「ふぅ~ん・・それは心配ね・・・
この子がいるかどうかは判らないけど、この先をしばらく行ったところに何十匹も猫がいる別名〝猫屋敷〟って言われているお屋敷があるの。
もしかすると、いるかもしれないわ、行ってみるといいわ。」
『ありがとう。早速今から行ってみるわ。』
「うん、ピンク色の門だから直ぐにわかると思うわ。」
『ありがとう、じゃまた今度ゆっくり・・』
「うん、またね♪・・あっ、それと、久留美さん・・・」


チッチッチッチ・・ポッポッポ・・

『ああ、夢か・・いつの間にか寝てしまったんだわ、こんなに蝋燭が小さくなって・・危ない危ない、火事になってしまうところだわ。 ふぅー・・・』

久留美は蝋燭の火を消し、電気を点けた。
窓辺には、相変わらず減ることのないシャンパンとグラスを曇ったガラスが惹きたてている。

『まだ降ってるのかしら・・』久留美は、窓ガラスの曇りを手でこすり外の様子を窺った。

(ミュー・・)
『?????ヒョウ?』
弱々しい猫の鳴き声に慌てて窓を開けると、1匹の猫が窓辺の軒下に寄り添うようにして縮こまっていた。

『あら、あら、こんなに震えて・・寒かったでしょ。
いつからいたの?気付かなくてごめんね。迷子ちゃん?』
久留美はすぐさま猫を抱き上げ、部屋に入れ、ストーブの前に置いた。
『お腹も空いてるのね。今すぐ用意するわね。』

(メリークリスマス!)
そう言って立ち去った周子の声がかすかに聞こえた。

翌朝になり、眼を覚ますと、昨夜の迷い猫がピッタリと久留美に寄り添い
寝息を立てている。
その姿に久留美の顔は久しぶりにほころんだ。

『そうだわ、猫は元いた場所に戻る習性があると聞いたことがある。
昨夜、夢で見た昔勤務していた会社の近所を捜索してみよう!』
昨夜の迷い猫を保護した久留美は、諦めずにヒョウの捜索をすることにした。

『貴方の迷子チラシも作らなくちゃね、きっと飼い主さん、心配してるわ。
寒いからエアコン点けたままにして行くからね、待っててね。』

(ミュー・・)

久留美は弁護士になる前に勤務していた会社へ向かった。
途中、あることを思い出し、ヒョウの捜索ポスターを抱えたまま事務所へ立ち寄った。

『これじゃない。ん~これでもない。えーとえーと・・』

事務所内の清掃は、毎日、ビル管理会社の清掃員が行うことになっているが、久留美の事務所に限っては、大切な物を破棄してしまう“うっかりミス”に対処出来るよう、ごみの収集は月末1回に限っていたのだった。

クシャクシャ・・『あーこれも違う。どれどれ・・』

ヒョウが記してくれた報告書も、ヒョウが投函し届けてくれた千鶴子の手紙もなくなってしまったものの、まだ一つ、残っていた物があった。
それはヒョウから「行ってみるといいよ」と言われたアドバイザー募集要項を記したメモだった。

これを読んだ久留美は、最大半年間の試用期間中を無報酬とするとの内容に立腹し、丸めて捨てたメモを探していた。

カサカサ・・『!あったぁ!!』

『どうか文字が消えていませんように・・・』
恐る恐るメモを拡げた。

     丸めた紙 ⇒  髢九>縺溽エ兩convert_20121203234511

あーよかった・・消えてなかった。
ヒョウは今日迄だって言ってたっけ・・連絡してみよう・・

最大半年間の試用期間中、無報酬というのは納得できない内容であったが、ヒョウを4年もの間、無報酬で遣ってきた罪滅ぼしのつもりだった。
久留美は来年4月からとの約束で契約をした。

『さっ、後はヒョウの捜索に行かなくちゃ!!』
久留美は、かつて野良猫だったヒョウが棲家にしていたOL時代の勤務先へ向かった。

『すみませーん、この子、見かけたら、ここへ連絡をお願いします。』
久留美はポスターを貼るだけではなく、道行く人にもチラシを配布した。


『すみませーん、この子、』

「あら、久留美さんじゃないの、どうしたのこんな所で・・」
夢で見た光景とそっくりに、OL時代の同僚、佳子が声をかけて来た。

『あっ、佳子さん・・この子探してるの。もし見かけたら連絡して。』

「うん、わかったわ。あそこは行ってみた?この先の猫屋敷。」

『・・・(これも夢と同じだ)・・・
もしかして、ピンクの門のあるお屋敷?』

「ああ、そうそう!!もう行ったんだ。」


『いいえ、まだこれから。今から行ってみるわ。』

(昨夜の夢のとおりなら、ここで佳子さんが「あっ、それとね・・」と言い出し、話しの続きがあるはずだ。)


「うん、気をつけてね。
この先を道なりに真っ直ぐ、少しあるけどね。じゃあまた今度ゆっくり。」

『ありがとう。またね。』

(??なんだ、これでおしまいか。。やっぱり夢の続きはないんだ・・)


緩やかなカーブ道をしばらく歩くと、一際背の高い家が建っていた。
そしてピンク色とも紫色とも見て取れるイリス門調の鉄製の門が見えた。

         025123_convert_20121203234052.jpg

『あった・・ここだ・・・』

インターホンは付いていないようだ。
『ごめんくださーい!!』
大声で声をかけるが応答がない。
(お留守みたいだわ・・)
人の背丈の二倍以上はあるだろうか、大きな鉄製の門は頑丈に施錠されていてビクともしない。
見上げた門の右端には表札が下げられていた。
(どなたのお宅なのかしら・・)
私は精一杯背伸びをし、目を凝らして表札を見た。

    『・・・・・あっ・・・・・』


ネコ屋敷へ向かう私を追いかけて来た佳子さんが話した夢の続きは本当だった。

「久留美さぁーん・・ああ、追いついた。(ハァハァ)
久留美さん、歩くの早いのね。。。
あのね、前から聞こうと思っていたんだけど、OL時代、会社の下で毎日誰にご飯あげてたの?」

『へっ?・・(バレてたんだ)あっ・・ネコ・・』

佳子は少し顔を曇らせて言った。
「やっぱり・・・千鶴子さんが可愛がってたネコ?」

『えっ?・・あっ、そうだけど・・
だって、千鶴子さん亡くなってからネコにご飯あげる人いなくなってお腹空かせたら可哀想だと思って・・・
会社辞める時に一緒に、』

佳子は久留美の話をさえぎるように話し始めた。

「駐車場のおじさんが言ってたのよ。
千鶴子さんが亡くなった翌日、可愛がっていたあの野良ネコも交通事故で亡くなったって。
でも、あの子はネコが亡くなったことを知らないみたいだって。」

『えっ?だって、毎日、ご飯なくなってたし・・それに』

「駐車場のおじさん、久留美さんが、毎日ご飯持ってきて、しゃがんでは誰かに話しかけたり、頭をなでるようなしぐさをするのを見て、気の毒で言い出せなかったらしいわ。
それで、黙って空の器を置いておいたんですって。
私もこの話し最近聞いたばかりだったから。
迷子ネコ、その家にいるといいわね。気をつけて、じゃまたね♪」


そんな・・・馬鹿な・・・・

ピンクの門の前に立つ私が目一杯背伸びをして見た先に書かれていた文字は・・・・

         saishilyu_convert_20121204001523.jpg


・・・・・・ ヒョウ、何が見えるの?窓際は寒いわ。こっちへいらっしゃい。

(ンナァーン・・・グルグルグル)

ふふふ・・ヒョウったら、甘えん坊さんね。

(ンナァーン・・
わがままで自分勝手になってしまった人間の心は冷たいけど、千鶴子さんの心はいつも暖かいな・・・)

ふふふふ・・
グルグルグル・・・

--------------------------- お し ま い ---------------デス------------

(*これはあくまでも小説であり、本来、ボランティア活動以外での無報酬での勤務・労働は労働基準法違反となります)


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