神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

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◆“ 時 “

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見ている。見ている。見られている。

ふーッ・・・・・

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7年ぶりの煙草に火をつけ、ああそういえばこんな味だったと思い出す。
一杯880円のコーヒーに1箱440円の煙草。
なんと言う贅沢な組み合わせなのだ。
そして、なんとセレブな気分なのだ。

あいつは言った。
「女の癖に煙草を吸う女は嫌いだ。」と・・・

見ている、見ている。
まだ見ている。

あいつは、かつてある雑誌で語っていた。
「好きな人がいた。結局その人とは付き合えなかったけれど気持ちは伝えた。
一生懸命な気持ちが伝わるのって嬉しい。」

あいつは〝 あの件 〟を知っていたのだろうか・・

見ている・・しつこいほどに見られている。

久しぶりの煙草に少し頭がクラクラとしているが、そ知らぬ顔で吐き出す煙と共に、つい先ほどまでは思い出すこともなかったほどの遠い昔が蘇る。

それは、苦さと香りだけが残る形のない煙と同じ、味のない恋の始まりだった。


「香奈枝、今日の放課後、付き合って欲しいところがあるんだけど、空いてる?」

『いいよ。どこの塾?』

久子と香奈枝は学年でも5位以内に入る優等生だった。
内緒だよ、内緒だよと久子に言われ香奈枝が付き合った場所は、徒歩でも20分程度、駅で言えば一駅先の、通学する高校から程近い場所にある、香奈枝にとっては全く未知の世界だった。

“芸能事務所”タレントや歌手などが所属する事務所だ。

久子は慣れた様子で事務所のインターホンを鳴らし入って行った。
香奈枝もその後に続き入った。
事務所に入ると、事務員の女性が二人、入り口から程近い場所のデスクに向かい合わせで座っている。
その奥には重厚な応接セット置かれ、すぐ脇の大きなデスクには事務所の社長らしき男が腰を据えていた。
男はゆっくりと立ち上がり、久子たちの方へ近づいてきた。
「いらっしゃい、今日はお友達も一緒に来てくれたの?」

「はい。同じクラスの香奈枝ちゃんに付き合ってもらって。」

『こんにちは。橋本香奈枝です。』

「こんにちは。もうすぐ浩次、来るからね。」


巽浩次・・・彼の芸名だ。
“なんたら”?とか言うドラマで既にデビューはしていたものの、レコードデビュー前の新人タレントだ。
久子は、巽の出演していたドラマを見てファンになり“追っかけ”らしきことをしていたようだ。
その頃、まだまだ駆け出しのタレントに会いに来てくれる数少ないファンは、事務所にとっては大切なお客様だった。

「おはようございます。」
巽浩次が現れた。
駆け出し、売り出し前とは言え、さすがにタレントだ。
見映えもいい、礼儀正しく気遣いも怠らない。

自己紹介を終え、通り一遍の挨拶を交わした後は特に香奈枝から話しかけることもなく、ゆるやかに時間は流れて行った。
帰り際、浩次が右手を差し出し香奈枝に言った。
「ありがとう、また会いに来てね。」
社交辞令の一言に、香奈枝もまた社交辞令的に答えた。
『はい。今日は楽しかったです。ありがとうございました。』

事務所を出てから少し歩くと浩次が後を追ってきて、香奈枝に忘れ物だとメモを渡した。
メモには「また近いうちに必ず来てくれるよね。待ってる。」と書かれていた。

その後、香奈枝は久子と共に、2週に1度程度の割合で浩次の所属する事務所へ遊びに行くようになっていた。

そんなある日、香奈枝は通学に使う満員電車の地下鉄で気分が悪くなり、途中駅で下車をし、外へ出た。
風に当たると気分もよくなった。
複雑に絡み合う地下鉄線を乗り継いで通う学校は、大通りから少し外れて歩けばそれ程の時間もかからない。
(此処からなら、歩いて学校まで行ける。)
香奈枝は少し冷えた空気を受けながら学校へ向かい歩いた。

「香奈枝ちゃん。」
呼び止めた声の主は“巽浩次”だった。
『あっ、浩次くん、こんなに早くからお仕事?』

雑誌の取材で早めに事務所へ向かっていた浩次と、気分が悪くなり途中下車をし、歩いて学校へ向かう香奈枝とが、初めて2人だけで話をした時だった。
社長が見出した言わば事務所の秘蔵子である浩次には、仕事場では常にマネージャーが張り付いている。
携帯電話などなかった時代、メールで連絡を取り合うなどということもできない。
その後、二人は“交換日記”という形で二人だけの時間を作ることになった。

事務所へ会いに行き、浩次から日記を受け取る。
そしてそれに返事を書いて香奈枝が再び浩次に渡す。
今の時代では考えられないほど産で地味な19歳と16歳の二人だった。

半年後、浩次はレコードデビューを果たし、アイドル歌手としてステージに立った。
女の子の黄色い声援を受けステージに立ち、ステージが終われば、取り巻きの女の子が常に周囲にいる売れっ子となったアイドル歌手“巽浩次”の姿を香奈枝は複雑な思いで見ていた。

忙しくなっても浩次は変わらなかった。
変わることなく香奈枝に接した。
交換日記も続いていた。
だが、マネージャーだけは香奈枝に辛く当たるようになっていた。


-------------- づ づ く ----------------------------------------------

今回は不思議系は含まない予定です。が、予定は未定です~
煮詰めないうちに書き出してしまいましたので、方向性が決まっていません。
つまらなくてすみません(--)

つまらないくせに、申し訳ないのですが、あつかましいのですが、
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◆“ 時 ” 2

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--------------------------- “時”1のつづき 2 ---------------です----------

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巽浩次と普通の女子高生香奈枝とのささやかな付き合いは、浩次がそこそこの売れっ子アイドル歌手となってからも変わることなく続いていた。
それを察している浩次のマネージャー持田は香奈枝に辛く当たるようになっていた。
そんな折、香奈枝の学校では文化祭が始る季節を迎えていた。

閉鎖的な私立のお嬢様学校の文化祭はさして面白くもない行事の一つであったが、
外部者の出入りを厳しく制限し〝招待券〟を持つ外部者でなければ校内に入ることは出来ない文化祭は、恋人のいる女子学生達が男友達や彼を披露する絶好の場となっていた。

一人3枚の招待券が配布された。
男友達のいない香奈枝は招待券の行方をもてあましていた。
そんな香奈枝が唯一、彼と呼べる存在は、売れっ子のアイドル歌手となってしまった今も交換日記を続け、事務所の社長やマネージャーの目を盗んでは時々会う巽浩次くらいのものだ。

(どうしよっかなぁ・・招待券足りない人にあげちゃおうかな・・
浩次にあげたところで忙しい浩次が来てくれるわけないし・・でも、言うだけ言ってみようかな・・)

香奈枝は思い切って浩次に切り出した。
「あのね、学校で文化祭があるの。
一人3枚の招待券が配られてて、皆、彼やボーイフレンドにあげてるの。
私、来てくれる男友達いなくてあまっちゃった。」

浩次は一言「俺がいるじゃん!俺が行くよ。」

歌手としてデビューして以降、忙しく、ゆっくりと二人で過ごす時間の取れない浩次のリップサービスとわかってはいたものの、ファンやマネージャーのいる前で即座に「俺がいる。」と言ってくれた浩次の気持ちが香奈枝には嬉しかった。
香奈枝は3枚の招待券を渡した。
文化祭1ヶ月前の出来事だった。


フーッ・・・
二本目の煙草に火を点けた。
何気なく、あいつの座る席に目をやった。
目が合った。
私だと確信したのではあるまいかと、何か悪いことでもしたかのように内心は冷やしやとしていたが、
無表情のまま目を逸らした。
換気扇に吸い込まれ形のなくなっていく吐き出した煙の行方を目で追いながら、大人になるとはこんなことなのかと自分に問いかけた。

傷つけたことを謝らなくていいのか。
傷つけられたことを、あの件の真偽を確かめなくてもいいのか。

もう何十年も前のことだ。
とっくに時効を向かえている。
そう云えばあんなこともあったねで終わる話しだ。
二度と近づきたくない、近づかないと決めた相手だ。

ふっ・・今さら・・・・・・

そしてなにより、私の座るこの位置から斜め前に見えるあいつは、もはや私の好みではない。
この場合は成長ではなく後退というべきなのか、随分と涼しくなった頭髪が時を感じさせる。
どちらかと言えば、こざっぱりとしていて清潔感のある涼しげな頭髪の方が好みのタイプではあるが、
それは中味が伴っての話しだ。
関係者との打ち合わせなのであろう、聞こえてくる会話からは俳優に転向し、妻帯者となった今でも、売れっ子だったアイドル時代を引きずる成長を遂げない中味の涼しい彼に魅力は感じられない。

フぅーッ・・・・
深呼吸をするように大きく煙草の煙を吐き出した。


文化祭の招待券を渡し浩次から交換日記を受け取った香奈枝は、塾へ向かう道のりを急いでいた。
「ああ、この間はどうも・・えっと、香奈枝さん?でよかったですよね。」

香奈枝を呼び止めた中年の男性は浩次の父親だった。
浩次からも紹介され、両親とは何度か面識があった。
つい先日も、アイドル歌手を取り上げた雑誌で両親は取材に応じ、その後、食事を共にしたばかりだった。

『お父さん、こんにちは。浩次君、今、事務所に来ましたよ。今日は取材か何かですか?』

「ええ、事務所の社長にちょっと呼ばれて・・少し早かったかな?
香奈枝さんよければ少しお茶でも飲みましょうか?」

『ええ・・あ、はい。』
塾へ行く時間が迫っていたが少しの時間であればと浩次の父親と喫茶店へ入った。
そこで香奈枝は思いもよらない事実を知ることとなった。


大人になった今なら理解できることは数多くある。
納得できることも、おそらくそうするであろうという許容範囲も持ち合わせている。
だが、未成熟な頃は白を黒とは言えず、かといって灰色では納得できない。
あの頃の私は、丁度、そんな年頃だった。


浩次の父親はとても誠実な紳士だ。
会話が弾み、取材を受けた時の話や失敗談、ひいては、子供の頃の話しにまで及んだ。
弾んだ会話の中で浩次の父親はつい、口を滑らせた。
いや、知っていると思っていたのかもしれない。

「そうなんです、あちらのご両親が心配していたんで、お会いして・・」

『あちらのご両親?』

「ええ。浩次君の小さい頃の作文もお借りして。」

(??自分の息子を浩次君?小さい頃の作文お借りしてって?
じゃあ、目の前にいる人は?お父さんじゃないの?)
『お父さん?・・は・・えっと・・・じゃあお母さんも・・・』

「私は劇団に入ってまして、そこから・・お母さんは違う事務所なんですけどね。」

『ああ、はあ。。。そうですか、大変ですね。』
何とか動揺を抑え取り繕った。

「ええ、まあ。でも仕事なんでね。浩次君も一生懸命やってますしね。」

『ああ、ええ、そうですね。それで作文はお使いになったんですか?』

「ええ、この前テレビ取材で使って。テレビご覧になりませんでしたか?」
お返ししなくちゃいけないんで、打ち合わせがてらお持ちしたんですよ。」

『テレビ、見ませんでした。今、その作文、お持ちなんですか?』

「ああ、見なかったんですか。ええ、持ってます。これですよ。」
浩次のお父さんは持っている鞄の中から作文を出して香奈枝に見せた。

『・・・・・・』
香奈枝は、小学生の頃に書いたという浩次の作文をチラリと見て、読まずにすぐに渡した。

「あっ、もういいんですか?放映された番組ご覧にならなかったんでしょ。いいですよ、もっとゆっくり。内緒ですけど。」

『ありがとうございます。でも、もう・・ありがとうございました。』

再び香奈枝の心は大きく動揺していた。
泣き出したい気持ちを何とか抑え、浩次の偽お父さんと別れ駅へ向かった。
途中、自然にあふれ出る涙を必死に拭いながら歩いた。


--------------------- またしても つづく ------ ゴメンナサイ --------------------

こんな夜分にUP、ごめんなさい。
また明日、夜中にこっそりUPしておきます。
夜中に図々しいのですが・・・下記ランキングにWポチ頂けると
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体調の悪い子、迷子の子、一日も早く元気に!戻りますように・・
外は深夜の冷たい雨・・
今夜も暖かくしておやすみください。こんな深夜もう寝とるわ!!!って?
これは失礼を・・・

◆“ 時 ”3

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----------------------- “ 時 ”2のつづき 3 --------- デス -------------------


浩次から紹介された両親が実は劇団員と別の芸能事務所に所属する俳優であったことを知った香奈枝のショックは大きかった。
紹介を受けた後も、偽両親はアイドル歌手浩次の両親として雑誌に掲載され、取材の帰りには仕事で留守であった香奈枝の父を除き、香奈枝と香奈枝の母、浩次と偽の両親、そして社長の6人で食事までしていたのだ。
更には、浩次が小学生の頃に書いた作文には題名、そして一行空け、浩次の本名である氏名が記されたその氏名は、浩次から聞き、公表されている本名とはまるで異なるものであった。

(ひどい・・・家族で一緒に食事までしたのに。
浩次の本名は山本正文じゃなかったの?早川一雄ってなんなのよ。
浩次の言っていること全てが嘘だったの?
この日記に書いてあることも?浩次の気持ちもみんな嘘?・・ひどい・・)

この日を境に、浩次との交換日記は香奈枝の手元から離れることはなかった。

香奈枝が浩次に会いに行かなくなってから2週間が過ぎた。

「香奈枝、浩次君から電話よ。」

『勉強中なの。いないと言って。』

「いるって言っちゃったわよ。ほら、浩次君、忙しいところかけてきてくれているのだから早く出なさい。」

都心の小さなマンションで社長の管理下におかれている浩次が同居する社長の目を盗み連絡をしてきたのであろう。
浩次に本当のことを確かめたいという気持ち、裏切られたという気持ち、騙されたという気持ち、それでも顔が見たい、会いたいという気持ち。
香奈枝の心は複雑に乱れていた。

香奈枝は母から受話器を受け取り保留音を外すとそのまま受話器を置いた。


往き来のない交換日記を手元に残したまま数週間が過ぎ、文化祭の日が訪れた。

特に誰も来る当てのない香奈枝は、午後から学校へ行くことにした。
正門へ入るか入らないかといった辺りまで来ると、クラスメート数人が待っていたとばかりに香奈枝に駈け寄ってきた。

『おはよう!もう来てたの?私、』香奈枝はいつものように元気に話し始めた。
クラスメート達は、朝の挨拶などおかまいなしと言った様子で香奈枝を取り囲み口々に言った。

「香奈枝、あんた、遅いわよ!」
「何してたのよ。」
「さっきまで、大騒ぎだったんだから。」
「裏門から入ったほうがいいよ。」
「早く早く、見つかるとうるさいよ。」

『???どうしたの?何?ルーが正門にいるの?』

ルーとは、校則違反を取り締まる風紀指導担当の教師のあだ名だ。
成績は優秀であったが、レイヤーカット禁止、肩まで付く髪の毛は耳の後ろから二つに結ぶ、靴下は糸で止めてある三つ折りソックス限定という、今の時代には考え及ばないほどの厳しい校則を「遵守する」考えを持ち合わせない香奈枝は、校則違反を繰り返しては反省文の提出やら訓告などのお粗末な処分を度々受けていたのだ。

「香奈枝は私達の真ん中にいて。」
香奈枝をガードするかのようにクラスメート数人が香奈枝を囲み教室へ向かい校内を歩き出した。

『どうしたの?どうしたの?』

香奈枝のすぐ右脇にいる友人の一人が小声で言った。
「さっきまで、巽浩次がマネージャーみたいなのと一緒に来たのよ。」
これを受け、左脇をガードする友人の久子が情感たっぷりに話し始めた。
「そうなの。
社長と二人で正門から入ってきて、浩次君はそのまま真っ直ぐ受付に進んで、(あの、巽浩次と言いますが2年A組の橋本香奈枝さんを呼んでください。)
なのに、あんたってば居ないから・・・
そのうちに“巽浩次”が来てるって、皆、出てきちゃって。
あとはもうキャーキャー取り囲まれちゃって身動き出来ない状態。
そしたら浩次君が
(今日はもう帰りますので、これを橋本香奈枝さんに渡しておいてください。)なんて言ってバラの花を受付の文化祭実行委員の先輩に預けて帰ったわよ。」

『ふ~ん・・浩次君、来てくれたんだ・・・』

「ふーん・・じゃないわよ!何のん気なこと言ってるの!
橋本香奈枝って誰だって、学校中で大騒ぎになってるの。だから私達があんたが来るのを正門付近で待ってたんじゃない。
風紀委員の先輩から目つけられたら意地悪されるよ。」

『あ・・そうだったの?ありがとう。』

浩次の残したバラが香奈枝の手元に届くことはなかった。

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クラスメートらの言うとおり、校内は大騒ぎになっていた。
文化祭が終了してもそれは続いていた。
下級生の中学生までもが教室に香奈枝を見に来た。
そして駅の改札で待ち伏せをしては「たいしたことないじゃない。あれが巽浩次の彼女なんだ。」と聞こえよがしに言った。
先輩からは「2年A組の橋本香奈枝と巽浩次ってデキテるんだってさー」と噂をされた。
そして風紀指導担当のルーからも「本年の文化祭では、本校にふさわしくない人を呼んだ人がいます。」と全校生徒の前で言われた。

浮ついたプライベートを反映するように、学力テストでは常に学年5位以内に入っていた成績も圏外に落ちた。
満点以外を取ったことのない数学ですら10位がやっとだった。

浩次の偽両親に偽本名の事実に加え、浩次が文化祭に訪れたことで学校中の噂の的となり、成績が落ちたことで教師からは懇々と説教を受けることになった香奈枝の心は折れかかっていた。

浩次と連絡を取り合わないまま1ヶ月以上が過ぎた頃、塾に向かう電車の中、度々、香奈枝につらく当たり、浩次と同事務所の無名の新人の応援にも行くよう強要され、行かないのであれば浩次にも会いにきてはならないなど、数々の嫌がらせを行った浩次のマネージャー持田と偶然会った。

既に、持田は事務所を退職し現在は印刷会社の営業マンをしていると言う。

その持田から、香奈枝に対するこれまでの嫌がらせは実は社長からの指示であったことを聞かされた。
四六時中、浩次と行動を共にする社長が浩次の気持ちを察しないはずはなく、
香奈枝を売り出し中の浩次に近づかせないために指示され、していたことであり、それは浩次も知っていたはずだと言うのだ。
持田は降車する駅に着くまで香奈枝に侘びを入れた。
そして、降り際、香奈枝に言った。
「あの社長には、あの事務所には近づかない方がいい。」

香奈枝の心が折れた・・・・
抑えていた悲しみの感情は怒りに変わり吹き出した。


香奈枝は浩次に手紙を書いた。
常連ファンの間ではメディアに出ている両親が実は作り物だということ、嘘だということが水面下で噂となっていた、両親のこと、本名のこと。
そして、文化祭の日以降の出来事。
多忙の浩次が、アイドル歌手として売れっ子の浩次が、スケジュールの都合を付けてまで文化祭に来てくれたことについては、本当は、本当は、凄く嬉しかったのに・・・
直ぐにでも会いに行きたかったのに・・・
滑らせたペンで記した文字は浩次を傷つける言葉だった。
「学校中の噂になり、先生からも注意を受けとても迷惑をしています。
全てが嘘だった浩次のこと、信じられなくなった。」

ヒットしたデビュー曲に次ぎ、2枚目のシングルがリリースされた頃だった。



事務所が作り上げた浩次の偽両親、嘘の本名も今ならなんとなく理解もできる。
ご両親は普通の人だ。
ひとたび雑誌に掲載されれば、様々な人の目に触れる。
言われなき事を言われることもあるだろう。
嫌な思いをすることもあるだろう。
本名にしても同じだ。
世の中には色んな人がいる。
自宅を突き止める人、電話番号を調べる人、普通の暮らしを脅かされることもあるだろう。

膨大な宣伝費をかけてデビューさせ、アイドル歌手として新人賞レースにも名を連ねるまでになった売れっ子に彼女がいるとなると人気が下がると懸念するのも当然だ。
それが有名人ではない、ごく普通の高校生とあれば何の宣伝にも使えない。
邪魔なだけだ。
なんとか付き合せないようにする、それも理解できることだ。

だが、考えても見れば、年頃の浩次に好きな人の一人や二人いてもおかしくはない。
たとえ付き合ったとしても、どのみち直ぐに壊れるのだ。
放置していていたところで、何ら問題などなかったことだ。
本名や両親に着いても同じだ。
本名を隠し、偽両親を作り上げたところで、浩次にも同級生の友人はいる。
実家の近所の人は皆、浩次を、浩次の両親を知っている。
偽の両親も偽の本名も直ぐにばれることだ。
何を意図しての戦略であったのかまったくもって不明であるが、事務所の講じた浅はかな策を真面目に捉えることもなかったのだ。


二本目の煙草を灰皿の中央で消し、人肌程度に冷めたコーヒーを口にした。
苦い・・・
広がった苦味が口の中に残る。
そろそろ出ようか・・・・・

「熱いコーヒー、煎れ直しいたしましょう。年末最後の営業日なのでサービスいたします。」
品のよい初老の店主がコーヒーカップをトレーに載せた。


------------------- ゴメンナサイ つづく ------- デス ------------------------

この年末の忙しい時に!
ごめんなさい。。。つづくです。
明日、最終話は早い時間にUPします。
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忙しい年末、ノロと風邪には要注意!
無理せず、早めに横になってくださいね♪

よい年末をお過ごしください。

◆“ 時 ”最終話

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----------------- “ 時 ”3のつづき 最終話 --------------- デス -------------


ザァーッ、ザァーッ、ザァーッ、ザァッ・・コーヒー豆を挽く音が響いた。
ほどなく、わずかな隙間まで行き渡るコーヒーの香りが店内全体を豊かに包む。

「おまたせしました。どうぞごゆっくり。」
品のよい店主は今日が年内最後の営業日だからと、冷めたコーヒーをサービスで煎れなおしてくれたのだった。

カップに口をつけた。
あっさりとしているが、まろやかで深みのあるブルーマウンテンが口の中で踊る。

・・・また見ている。

今度はあいつと、あいつの前に座る関係者らしき男、四つの目が此方を、私を見ている。
その視線は「こっちもコーヒー冷めてるんだけど・・」と言わんばかりに、店主と私の交互に向けられている。
あいつと再び目が合った。
目が合った途端、あいつは微笑を浮かべた。
私はやはり無表情に目をそらし、カップの中で輪を描くコーヒーに目を落とした。


浩次に別れを告げる手紙を出してから1週間が過ぎた。
帰宅後、いつものようにポストを覗くと浩次からの手紙が届けられていた。
手紙には、すごく会いたい、話がしたい、それが無理なら顔だけでも見せてほしいと言う内容が書かれており、レギュラー番組のチケットが同封されていた。

確かに浩次とは文化祭の招待券を渡して以降、2ヶ月近くも会ってはいない。
偽者の両親を紹介されたこと、本名すら偽名であったことに腹を立ててはいたが香奈枝も同じ思いであった。
会いたかった。話がしたかった。顔が見たかった。

収録の日、香奈枝はこれが本当に最後だと自分に言い聞かせ、浩次から送られてきたチケットを手に会場へ向かった。

駅から会場へ向かう反対方向から社長が歩いてきた。
社長は香奈枝を見つけると、香奈枝に微笑みかけながら近づいてきた。
そして、香奈枝に言った。
「浩次には近づくな。近づいたらしめるぞ。」

社長は香奈枝を恫喝したのだ。
浩次の元マネージャー持田の言葉が香奈枝の頭を過ぎった。
「あの社長には、あの事務所には近づかない方がいい。」

香奈枝が、アイドル歌手“巽浩次”ステージを見ることは一度もなかった。

翌週、香奈枝が見に行くはずだったあの日の収録された番組が放映された。
ステージ上で右に左に、上下に・・・テレビ画面からも十分に確認できるほど浩次の目が泳いでいる。
香奈枝の姿を探しているのだろう。
社長から香奈枝を恫喝したことを聞かされたのであろう、その翌週以降、浩次の目は泳がなくなった。

校内での噂も落ち着いてきた頃、
授業中に友人の一人が香奈枝に近寄り耳打ちをした。

「ねぇ、横断歩道の先の電柱のところに立ってるの、浩次君じゃない?」

窓から外を覗くと、正門近くの横断歩道向こう側には、友人の言うとおり、確かに浩次が立っていた。

「最近、会ってないの?」
『うん。』
「この前も放課後来てたよ、行ってあげなよ。」
『近くのスタジオで撮影でもあるんでしょ。』
「香奈枝に会いに来てるに決まってるでしょ、鈍感!」
『まさか・・そんな勇気、あるはずないでしょ。』

勿論、解っていた。
授業が終わる時間を見計らい待っていたことを・・・
だが、香奈枝は決めたのだ。
二度と関りたくない、関らない。関ってはならない相手だと・・・

半年後、あいつは雑誌のインタビューで語ったのだ。
「好きな人がいた。結局その人とは付き合えなかったけれど気持ちは伝えた。
一生懸命な気持ちが伝わるのって嬉しい。」
事務所の管理下にあったあの頃の浩次にとっては、これが最大級の抵抗だったのだろう・・

3曲目のシングルがリリースされる頃、その人気は満ちた潮が引くように衰え、あいつは表舞台から姿を消した。

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今の時代であれば、きっと、違っていた二人であったのだろう・・
もしも今だったらどうなっていたであろう、二人は普通の恋人同士のようになっていただろうか・・・
いや、変わらなかったかもしれないな・・・

店の看板に明かりが灯った。

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あーもうこんなに陽が落ちていたのか。
そろそろ帰らなくては・・・・

『すみません、お手洗い、貸してください。』
「ドアを左に出たところです。どうぞお使いください。」
品のよい店主はドアまで私を見送ってくれた。

フロアを出たところで、男がぶつかって来た。
あいつだ。巽浩次だ。
振り向いた私に浩次は言った。

「やっぱり香奈枝じゃん!」

開いた口がふさがらないとはこのことか・・・

いい年をした大人が、何十年ぶりの再会に「やっぱり香奈枝じゃん!」はないだろう。
誰かの記者会見の名セリフではないが、「今度、生まれ変わったら一緒に ~ ~ ~」・・・・はありえない。

私は答えた。
『お人違いではないでしょうか?失礼いたします。』
換気扇に吸い込まれ、形を作ることの出来ないまま消えて行く煙草の煙のように、形のない苦い思い出はこの一瞬の“時”が完全に消し去ったのだった。

悲しみや辛さを癒してくれる ありがたい“ 時 ”
もう少しこの時間が長く続いて欲しいと願っても終わりを告げる残酷な“ 時 ”。
“ 時 ”という残酷でありがたい刻みは、今なお、私の目の前で繰り返されている。
気付けば2012年も大晦日を迎えてしまった。
特に何の成果もなく2012年最後の日を迎えてしまった。
来年こそは・・・と毎年思う晦日であった。


------------------------------- お し ま い -------------------------------

今回は不思議系スパイスを抜いたので、ありそうでなさそうな・・なさそうでありそうな話にしてみました。


2012年7月25日、人生初のブログを始め、気まぐれに更新して参りました。皆様のありがたいお心遣いを頂戴し、ズボラでぐうたらな私が無事に晦日まで更新できました。
ありがとうございました。
来年2013年もよろしくおねがいいたします。

2013年、皆様に素晴らしい年となりますように・・・・

2012年納めのWポチ、頂けるとうれしいです。よろしくお願いいたします。

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1月2日 ~2,3日お休み・・するかも?



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