神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

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Posted by 空耳ロバ on

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◆ 精霊たちの宴 ◆

Posted by 空耳ロバ on

リリーンリリーンリリーンリリー・・・
出ようと電話機の傍まで行くと切れる。

もう何度か繰り返している。

毎年、この時期にはよくあることだ。
特段驚くこともない。
そろそろ仏間が賑やかになってきた頃であろう。
木箱から、紺色、橙色、白色のカラーボールを取り出し、それぞれ位牌の前に置いた。


「はーい、整列してくださーい」

「それぞれの伝票番号の列に並んでくださーい」

「あっ!ちょっと!横入りはだめですよー」

伝票を手に、長蛇の列。

『はい、よろしい、次』
伝票に目を通し規則正しく許可印を押しているそのお方は、大日如来様。

『おやッ?ここは真言宗の列ですよ。
貴方は浄土宗ですから、阿弥陀如来様の列ですね。
アッピー、この方、間違われてこの列に並んでらしたからお願い』

「はい、大ちゃん、了解!伝票回して」

こんな調子で、この時期の天界は毎年、盆の外泊許可を申請する精霊たちで、てんやわんやの大騒ぎだ。


「あーどうもどうも」顔見知りの六さんが、真言宗の列に並ぶ八っさんに声をかけた。

「あれ、六さん、今年はどうされたんですか?」

「私は東京なので、盆の帰省は7月なんです。だから8月はこうして神道の方たちに混じって係員をやっているんですよ」
地域により盆は7月と8月に分かれる。
そして
盆のない神道は、亡くなられてから50日を過ぎると天界へ上がり、神となると言われていることから、
仏教にある天下界共通の「盆」の時期に降りられていらっしゃることはない。


「八っさんは先月も帰ったでしょ?今月も呼ばれたの?」六さんが聞いた。

「ええ、私の出身したところは8月ですが、東京は7月なので、毎年2回呼ばれて行くんです。」

「あぁそう・・・いいねぇ。だったら今月もあの方達に土産、頼むね」

「ええ、任せておいてください。」


六さんの言う「あの方達」とは・・
身寄りがないため、お盆の時期がきても呼ばれない人や、仏教において戒名がなく行き場のない、
いわゆる「身元引受人」がおらず、帰省できない精霊様方の留守居組だ。

「身元引受人がいないのは仕方ないとしても、
まったく!戒名ってのは難しいと言うか、厄介と言うか・・・。
天界じゃあ、戒名で格付けなんてしないのに、下界じゃあ、仏教が文字数や戒名に入っている漢字でその家の格を表すものだから、こっちの世界でもやりづらくってしょうがないよ。
神道は戒名なんてつけないのにね。。」六さんは言った。

『まったくそのとおりですよ』
留守居組の誰かが口を挟んだ。

「あれ?ぽん太姉さん。今年はどうしてここに?
毎年8月は帰省していたでしょ?」六さんが言った。

『ええ、そうなんですがね、
まぁ、700年も居ると下界の代も色々と変わりましてね・・・
なんでも今年は、家族で海外旅行に行くとかで、お盆はしないようなんですよ。
だから今年は身元引受人が留守で帰れないので、私も留守居組の仲間入りですよ。
ずっと続いていた「あれ」も取り消しです』

「そうですか、、ぽん太姉さんとこも、とうとうそんなになってしまったんですか。
私はここへ来て、まだ400年ほどですが、ここ数年、多いですね。
まったく最近の下界の者達と来たら!
私ら天界に来てしまった者達は、年に1遍しか下界に降りられないって言うのに、
下界の者が呼んでくれないと降りることも出来なくなってしまう。
こんなこと、下界の者は知らないんだろうな。」

それを聞いていた八っさんが言った。
「どうでしょう、私の家でよければ一緒にいらっしゃいませんか?」

「八っさん、あれ、もう持ってるの?随分と早く発行されたね」

「はい、おかげさまで。」

八っさんは毎年2回、一度も滞ることなく、東京の盆の時と旧盆に呼ばれては帰ってくる。
天界歴はまだ150年程弱であるが、天界と下界との意思疎通が量られている良好な関係を築いたとして、特例が認められ、
通常は天界歴300年以上の者が選定対象となる「優良精霊資格証」の発行がなされたのでる。
そのため、八っさんは、この優良証を持っている精霊だけが許される「お連れ様身元引受霊」の資格があるのだ。

八っさんは、盆帰省外泊同行希望者を募った。
居留守組精霊の全員が下界への外泊を希望した。
だが、全霊と帰省するわけには行かない。
1回のお連れ様可能人数は13霊である。
仏教の宗派は13宗56派から成り立っているところから「13」と決められていた。

どうやって決めようか・・・

ここは下界ではない。天界だ。
じゃんけんや、アミダくじなど、競争心を煽ったり運試しなどの下品なことはしない。
譲り合いで決めた13霊が八っさんに同行し下界へ行くことになった。

13日、盆の迎え火から、天界へ戻らなければならない16日の送り火まで、僅か3泊4日の下界旅。

「では、参りましょう」


りりりーんりりー・・・りりーんりりりりー・・・

「はい、もしもし。もしもし」 りリリー・・りりーん・・りりりりー

!?電話じゃなかった、間違えた。

毎年、旧盆の8月13日前後に鳴き始める鈴虫の音色は、
16日前後、最も大きく美しい音色となり、精霊たちの今宵、最後となった宴に、一層の賑わいを添えているのであった。

お帰りなさい、ご先祖様、みなさま。
また、来年、是非、お待ちしております。

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