神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

スポンサーサイト

Posted by 空耳ロバ on

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

◆ 脳内ツアー3最終話◆

Posted by 空耳ロバ on

私は添乗員が浮かべた不気味な笑みが妙に気にかかってはいたものの、ここは脳内だ。
そう簡単に途中でツアーを降りることは出来ない。

「大脳辺縁系」から「海馬」→「扁桃体」の観光を終え、この旅行最後の目的地へと向かった。


『 それではこれより最後の目的地、自律神経など中枢神経の最高機関「視床下部」へ参ります。
こちらは、睡眠、摂食、飲水などの本能行動や、怒りや不安などの情動行動の中枢となります。

観光の注意事項はこれまでと同じでございます。

こちらが壊れますと、自律神経のバランスを崩したり、怒り・不安のコントロールが出来なくなったり、睡眠不足や摂食障害を起こしますので、入室後も注意事項を厳守頂き、ご見学ください。』

視床下部は、細い海馬や小さく狭苦しい扁桃体に比べると広々としていた。

(うわぁー広い)
『こちらは最高中枢機関でございますので、大脳辺縁系の中でも一番奥に位置する空間でございます。
こちらが壊れますと、体内時計に狂いが生じたり、曳いては扁桃体に影響し、海馬にも狂いが生じて参ります。』

(ジイさん、何してんだよ!)
(冥途の土産じゃよ。ちょっとくらいの撮影はかまわんだろ)

♪トゥル♪トゥル♪
(もしもし、今、旅行中なんだ)
(携帯は駄目なんじゃなかった?)
(・・もしもし?うん、大丈夫。うん、そうだよね)
(いい加減やめてください!)
(うッせーな!仕事の電話なんだよ!)

その時、
チカチカチカ・・・

灯りが点いたり消えたりし始めたかと思うと、視床下部は大きく歪み始めた。

(きゃー!!!!)
(ちょっとーーーーー!)
(携帯なんか使うからだ!)
(フラッシュ撮影なんかするからだよー)
(添乗員、なんとかしてくれ!)

灯りが消えた・・・

(あ・・でもなんか・・キレイ・・・)

013281_convert_20120830005435_convert_20121220163401.jpg

(大丈夫なのか・・)


『皆様、お疲れ様でございました。
以上を持ちまして脳内ツアーは終了となります。
お出口は此方でございます。
出られましたところでツアー参加の記念品をお渡しいたしますので、是非、お受け取りくださいませ。』

添乗員はそう言いながら、視床下部の出口ドアを開けた。

(なんだ・・脅かすなよ)
(あーよかった)

出口へ繋がる広く明るい開放感のあるその通路をツアー客らは滑るように下って行く。
私もその後に続いた。
記念にと名前を記す者もいた。

「お疲れ様でした」

出口では乗務員が一人一人、丁寧に記念品の箱を渡している。

『大変お疲れ様でした。脳内ツアーはいかがでしたでしょうか?』

(結構、スカスカだった)
(見る場所によって、ギュウギュウだったり、そうでもなかったり)
(わしの見たところは思っていたよりもシワが少なかったな・・)
(壁が剥がれかかっている所もあったけど、いい経験したよ)
(えーそんなとこあったの?私見逃しちゃった)
(また、ゆっくり行ってみたい)

『ありがとうございます。
皆様、それぞれのお感じ方でよろしゅうございました。
同じということは絶対にございませんので、ご安心くださいませ。
なぜなら・・・
今、行った脳内はご自分の頭の中ですから・・・』

(えー!!!!)
(早く言えよ!)
(そうよ、最初からわかっていたら)


『私は、最初に注意事項を申し上げたはずです。

早く言えば・・・最初からわかっていたら・・・どうされたのですか?

ご自分の子供が走り回っていたら注意をなさいましたか?
携帯電話の使用をなさいませんでしたか?
ごみを捨てたり、撮影や落書きをなさいませんでしたか?
騒いだり、触ったり、記念に削って持ち帰ったりはなさいませんでしたか?

最初からご自分の脳内だと知っていたら、
注意事項を守ったとおっしゃるのでしょうか。』

淡々とした、だが厳しさが伝わる口調は、怒鳴られるよりも迫力がある。


ツアー客の一人が言った。
(脅しだろ・・)

(そうだよね)
(そうよね。そんな馬鹿なこと・・)
(ははは・・嘘だよね)

添乗員は微笑を浮べながら
『さぁ・・・
今の話が嘘か真かは、ここでお手元の記念品をお開けくださいませ。』


乗務員から受け取った記念品の箱を開けてみるとそこに入っていたものは・・・・

鏡・・?

手のひらサイズほどの鏡だ。
その鏡にはツアーの記念になるようなものは何処にも記されていない。

『皆様、左手に鏡をお持ちになり、よ~く、その鏡を覗いてください。』


             鏡

(何にも見えないよ)
{自分の顔しか写っていないけど・・)
(うん、自分の顔以外、何も見えないな・・)

『 皆様、ツアーにご参加いただく際に並んでお待ちいただきました時のことを思い出してくださいませ。

「自慢屋」「上から物言う偉そうな」「自分勝手」「パワーハラスメント」
「思いやりのない」「わがまま」
皆様、そのような境界線上の方々が最低だとおっしゃってご参加くださいました。
参加条件は、その境界線上の方が一人でもいらっしゃることでした。
よ~くご覧くださいませ。
映っておいででしょう・・・境界線上の方が。』

(自分・・?ってこと?)
(ムカつく!)
(ケンカ売ってんのか!)

『失礼をいたしました。
お気に召さなければ此方に回収BOXがございますので、そちらにお入れ頂き、お帰りくださいませ。
またのご参加をお待ちしております。』

(誰が参加するもんか!)
(なんなんだよ!)
(不愉快だわ!)
(まったく失敬な!)
(二度と来ないよ!)

ツアー客は口々に捨て台詞を残し、回収BOXに鏡を捨てている。
帰るその姿は無表情でどことなく危なげな感じだ。

私も置いて帰っちゃおうかな・・・
「こらこら!持ち帰らんと大変なことになるぞ!」

「あら、神様、いつの間に」

「わしが声をかけなければお前にも見えんからな・・ずっと一緒におったぞ。
とにかく記念品の鏡は持ち帰ることじゃ。ほな、またあとでな。」

私は神様の言ったとおり、少しムカツク記念品を持ち帰った。



♪プルップル♪

「フール、今回も首尾よくいったようだな。。。」

『はい、最高監事。・・ですが・・・3名ほど、鏡を持ち帰ってしまいました。』

「ああ、そのようだな。残りは497枚というわけか。」

『申し訳ございません。』

「気にするな、持ち帰りが10枚超えなければ赤字にはならんからな。」

『次回ツアーの際は持ち帰りゼロを目指します。』

「最高顧問、無料のツアーなのに、なぜ、赤字にならないのですか?」

「ソード、まだ君は此処に来て日が浅かったね。
唯じゃないさ。費用はもらっているよ。
最初に言ったとおり参加費用は「心」だからな・・・
もっとも、注意事項を守られたり、心を写す鏡を持ち帰られては赤字になってしまうが。
さあ、自分勝手な輩がいるうちはまだまだ稼げるぞ、稼ぐぞ、フール」

『はい、最高顧問。』
「ソードもお手伝いいたします。最高顧問。」

あっははは・・・はははは・・ホホホ・・・


ふ~ん。そういう事だったのか・・

「なっ、持ち帰ってよかったじゃろ。」

「あっ神様。うんよかった」

「人の振り見て我がふり直せじゃよ・・・あれは心の鏡じゃからな。」


私は木箱から持ち出したマーブル模様のカラーボールと持ち帰った鏡を手に家に帰った。
書斎の電話が鳴っている。

「はい、もしもし 」

『 先ほどは当ツアーにご参加いただきありがとうございました。
次回の脳内ツアーのご案内でございます。』

書斎の机に置いた鏡にマーブル模様のカラーボールが映っていた。



-----------------お-----し-----ま-----い------デ--ス-----------


スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。