神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

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Posted by 空耳ロバ on

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◆ 琴と筝 3 ◆

Posted by 空耳ロバ on

婚礼を8日後に控えた筝は、挨拶回りに忙しくしていた。
その日も挨拶に行った先でついぞ話し込み、すっかりと遅くなってしまった。

いつもの古寺近くに差し掛かった辺りで満月に靄がかかった。
・・・とその時。

今までに聞いたこともないそれはそれは美しい琴の音色が聞こえてきた。

「素晴らしい・・」供の者も皆、呪術がかかったように微動足りともせず聞き入っている。

『おきんちゃんだわ。弾けないって言ってたけれど、間違いなくおきんちゃんだわ。』
筝にはその音色を奏でる主がきんであることは直ぐにわかった。

翌日、筝はおきんを尋ねた。

『夕べ、琴を弾いていたのおきんちゃんでしょ?美しい音色だったわ。』
「ちょっと、悪戯に弾いていただけよ・・」
『ううん、なんとも言えない素晴らしい音色だわ。
それでね、お願いがあるの。』

筝の頼み事は、婚礼の日にきんと一緒に琴の音を披露したいというものだった。

「おそうさんと私が一緒に同じ曲を弾くことは難しいわ。
だって、
おそうさんの弾く「筝」(そう)は、13弦、音を変えることのできる琴柱(ことじ)もあるし、爪も義爪を使って弾くから自爪も割れずに済むでしょ。
でも私の弾く「琴」(きん)は、7弦で琴柱もなければ爪も自爪で弾くものなの。
ふふ・・
「筝」と「琴」どちらも「こと」と読めるけれど、実際は「そう」と「きん」、丁度、私達と一緒ね。
それだけ「筝」と「琴」とでは違いがあるのよ。」

『じゃ、おきんちゃん一人ならいい?ねぇお願いよ。』

それでもきんは一旦は断わったが、筝のたっての頼みとあり、婚礼の日取りを聞き、ある条件と引き換えに渋々承諾した。

婚礼の日が訪れた。

筝はきんを「琴の名手」とだけ言い、父弦右衛門に紹介した。
婚礼が始り、きんは琴袋から「琴」を取り出し祝宴の席についた。

その「琴」と見た弦右衛門はギョッとした。
『あ・・・あれは・・・』

キンの爪弾く琴の音色は素晴らしいものであった。
誰もが手を止め、話をやめ、物悲しくも美しい響きのある音色に魅入られていった。
だが、弦右衛門だけは違った。

あの琴は、あの時あの子が生まれた時にあつらえたものだ・・
あの娘の名はなんと言うのだろう・・
いや、そんなはずはない。
まさか・・・

婚礼後、弦右衛門は来客への挨拶もそぞろに、琴を弾いた娘の姿を探した。

『お礼をしなければならんのだが、琴を弾いた娘は何処へ行った?』

キンはいつの間にか姿を消していた。


翌日になり、弦右衛門はお筝を呼び、あの娘の名はなんと言うのか、どこに住んでいるのか、あの琴はどこで手に入れたものなのか尋ねた。

お筝は答えに困った。
名前も居場所も一切明かさないという約束できんに琴を弾いてもらったからだ。
『実は、私もよく知らないの。知り合いの知り合いのまた知り合いの、そのまた知り合いで・・』

「何も知らない者を婚礼に呼んだのか!そんな馬鹿なことがあるか!」

『だって、知らないんですもん』

「あーもういい!」

『どうしたのお父っつぁん、なんだか変よ・・』


琴を弾いてくれたお礼にと、お筝がきんを尋ねたのは、婚礼から2日後の9月19日のことであった。



---------------ま た ま た つ づ く---デス----すみません、あとでUPします------------


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