神様がくれた休日~真話か偽話か空耳か~

フィクションともノンフィクションともつかない一人話を 時には まじない交え思いつくままツラツラと・・

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◆まやかし8

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-------------------- まやかし7 の つづき 8 --------- デス ---------------



僕が墓地で出会った北白河家の墓守をしているかつては千鶴子のばあやだったという老女の話しを聞いた、車内で痴漢に間違われたその日以降、兵藤は消えた。

考えてみれば兵藤がこの支店に訪れてからと言うもの僕はついていなかった。



「おお、高橋!久しぶり。」

『悪いな、急に。』

僕は墓地で会った老女の話が事実なのか昨日の出来事が真実なのか確かめるため、同期入社で本社の総務部にいる木口に頼み込み“田中千鶴子”について調べてもらった。

「ええっと・・田中千鶴子さんの入社は今から13年前、高卒で異例の本社採用。
よっぽど優秀だったんだな・・
入社後、会社の研修制度を利用して、ハーバーガー大学へ留学。
経営学を専攻し、わずか3年で飛級、首席で卒業、と同時にMBAを取得して帰国。
本社に戻ってからは社内唯一のMBA資格保持者ということで経理の他、経営に関することも携わり株主総会にも度々出席していたようで、かなりの優遇を受けていたみたいだ・・
元々心臓が弱く無理の出来ない身体だったから、本社勤務は辛かったんだろうな。
でも、優秀な千鶴子さんを本社は手放したくない。
で、表向きは成績不振の支店を立て直す名目で、3年前、支店の中で一番暇な・・高橋、お前のいる支店に異動になったんだよ。
だから、千鶴子さんの所属はあくまでも本社のままだったはずだ。
お前、付き合ってたくせに何も聞いてなかったのか?」

『ああ・・大学へは進学せずに高卒入社だってことしか・・・』

「そうか、お前は入社当初からあの支店勤務だったから知らなかったんだな。
それに千鶴子さんは自慢する人じゃないし多くを語らない人だったからな。
確かに採用時は高卒入社だけど、最終学歴はハーバーガー大学だよ。」

『それで、田中千鶴子は北白河千鶴子だったのか?』

「そこなんだよ、それは誰も知らないって。
でもありえない話しじゃないよな。
知的な上に品もあったもんな・・・
なんだよ、高橋!今頃、おしいことしたなんて思ってんじゃないだろうな。」

『馬鹿な・・千鶴子に振られたのは僕の方だ。それに僕は多賀子と結婚する予定なんだぞ。』

「ははは、、、、、、
お前のことだから、千鶴子さんの経歴知って後悔したかと思ったよ。
そうか、とうとう決めたか、多賀子さんとの結婚。」

僕は「お前のことだから」と言った木口の言葉が突き刺さった。
そして修道女の「貴方は何も知らない」と言った意味もようやくわかった。
本当に何も知らなかった・・・
いや、幼い頃に両親を亡くし高卒入社の千鶴子には何もないものだと決め込み、知ろうともしなかったのだ。
その千鶴子が・・・そんなに・・・・

ブブブブ・ブブブブ・ブブー・ブー・・・・

先ほどから何度もスーツのポケットで携帯が振動している。
どうせ、入籍だけでも先にとせっつく多賀子からだろう・・
面倒だ。
入籍を先にし、結婚式は2人で海外で挙げ、帰国後、落ち着いてから披露宴はすればいい・・・多賀子の提案だった。
僕も30歳までには結婚し、その後、父の会社を継ぐという人生設計は立てている。
だが、今は多賀子と話す気分にはなれない。

僕は千鶴子を思い出していた。
千鶴子はなぜ、僕に話してくれなかったのだろう・・
恋人の僕にまでなぜ、そんなに身分を隠す必要があったのだろう・・
それとも千鶴子は、僕がステイタスや損得だけで人を選ぶ人間だと思っていたのだろうか・・

本質を見抜いていた・・修道女の言葉が頭を過ぎった。

僕は訳もなく、千鶴子に腹が立ってきた。
そして、ただ甘え、依存し、ぶら下がるだけの強引な多賀子が面倒な存在にすら思えてきた。

そう言えば・・・・
修道女はこうも言った。
僕が千鶴子の優しさにただ甘え、依存していただけだと。
けれど、、僕は違うな・・
デートの時の飲食代はいつも僕が払っていたから千鶴子に依存をしていたわけじゃないな、うん、違う。


(いるんだな。都合のいい方に勝手に解釈して、自分を正当化する馬鹿。
ポジティブシンキングも度を超えると病気だ。
あんた、病院行ったほうがいいよ。ああ、馬鹿につける薬はないか・・・)


「・・・?・・」誰だ?違う、木口じゃない。
朝から聞こえるこの声は誰なんだ?

「あーもうこんな時期かぁ、きれいだなぁ~」
木口は町を彩る一足早いクリスマスのイルミネーションの輝きを見上げている。

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『・・・こんなの・・景気がいいように思い込ませる見せ掛けだ、
この時期だけの“まやかし”だよ。』

「???どうしたんだよ、高橋?大丈夫か?お前らしくないな。」


木口と別れ、自宅のある最寄駅に着いた。
今日は朝から色々な事があり過ぎたせいかいつもより足が重く感じる。

ブブブブ・ブブブブ・ブブー・ブー・・・・

まただ・・・ッたく!うるさいな、何度も何度も!多賀子の奴!!


「何だよ!!何度も何度も!!」

『どうした弘?何かあったのか?』

珍しく父からの電話だった。

「いや、何も・・」

『何もって声じゃあなかったぞ。多賀子さんと喧嘩したんだな。』

「そんなんじゃないよ、で、どうしたの?
パパこそ珍しいじゃないか電話してくるなんて。」

『んん・・どうなんだ?多賀子さんとは?うまくいってるのか?
今日、多賀子さんが来たぞ。』

「えっ?多賀子が?」
婚約期間が長いことに不満だった多賀子は父に会いに行ったらしい。
今日、会社を休んだのもそのためだったようだ。

『で?弘、お前はどうなんだ?』

「パパが急にいい返事をしなくなったから婚約期間が長くなっているだけで何も・・」
昨日から非現実的なことばかりを体験し考えるゆとりも気力も残っていなかった僕は、力なく適当に答えた。

『大丈夫か弘?
なんだ、そんなに元気がなくなるほど多賀子さんと早く結婚したかったのか?
パパは別に反対しているわけではないんだ。
けれど、この先、何があっても力を併せてやっていける相手なのか多賀子さんは?
大丈夫なんだな?』

「うん。そうだね・・」再び適当に返事をした。


話が決まるとその後は早かった。

僕と多賀子は一番近い日の吉日を選んで入籍をした。
翌月には1週間の予定で、新婚旅行を兼ねた挙式を海外で行う段取りもした。

しばらくはバタバタと雑事に忙しく自宅には寝に帰るだけの日々が続き、いつもの帰り道がいつもとは少し違っていたことに気付くのは後になってからだった。

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入籍を急いだため新居は決まっていなかったが、それでも姓が変わってからの多賀子は会うたび終始機嫌がよかった。
僕との入籍をこれほど喜んでくれるのならもっと早くすればよかったとすら思った。

「ねぇ、新居なんだけど、私はやっぱり山の手タワーヒルズがいいわぁ・・」

『ああ、そうだね。
今の僕の給料では無理だけど、一月500万くらいの家賃なら、親父に言えば出してくれるから、新婚旅行から戻ったら契約に行こう。』

「うん、貴方と結婚して本当によかったわ~」

多賀子が寿退職をした翌月、二人は挙式を兼ねた1週間の新婚旅行へと旅立って行った。



私は相変わらず休みの日でも毎日、会社の野良猫「ヒョウ」にせっせとご飯を運んでいた。

高橋さん達、今頃、式を挙げているころかなぁ・・
日本は日曜日だけど、ドバイは何曜日なのかなぁ・・・

「ヒョウ」にご飯を運んだ帰り道、電気店の店頭に置かれているテレビから臨時ニュースが流れていた。


『 国内最大手の高橋直販買が民事再生法を申請しました。
負債総額は業界史上最も大きい1839億円であることから、受け入れ先を探すのは難しく、事実上の破綻となりました。
繰り返しお伝えいたします。
国内最大手の高橋直販買が民事再生法を申請し・・・・』

「・・・・高橋さんの会社だ。・・・あっ、雪・・・」

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掌に舞い降りてきたその雪は、一人で過ごす私に温かいホワイトクリスマスをプレゼントしてくれた。

その年、私は退職した。夢を叶えるために・・・



------------------------- つ づ く 次回、最終話 ----------------------

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